凪ちゃん先生のきまぐれ模様
タビビト
プロローグ
「ふぅ.....」
やはり「何か」の始まりというものには、回数を重ねても私は慣れないらしい。
四月の初旬、少し暖かさを感じ始めたけれど夜はまだ寒さが残る春の季節。
あまり朝に強くない私は若干ギリギリでバス停に着き、丁度やってきたバスに乗って空いていた席を見つけ落ちつこうと少し息を深めに呼吸し吐いた。
水平線から昇ってきて間もない太陽の光が、窓硝子越しにバスの車内を照らす。
「眩し...」
眩しさで目を瞑り、バスの中で時より左右に揺られながら今日から始まる学校生活.....。
いや、勤務場所は学校だが立場はこれまでの「生徒」としてではなく憧れの「教師」へと変わり、初出勤という事で若干の緊張と懐かしい高校時代に思いを馳せていた。
私が青春時代に抱くものは、きっと一般的な人よりも思い入れが強いと思う。
世間で言う普通の学校生活を当たり前のように送る事が叶わなかった私には、遠い遠い夢物語でしかなかった。
だからこそ、私はこの職であり立場を目指した。
あの当時の記憶は今でも嫌悪する程に鮮明に脳裏によぎる。
正直、思い出す事さえ精神的には苦でしかなく偶に吐き気すらおぼえていた。
でも、それと同時にいつかは向き合えるようにはしなきゃいけないとも思う。
──まぁ今はこれからの事の方が大変だもんね...
景観が変わり映えしない海に近い道をバスは走っていたが、やがて目的地のバス停のアナウンスが流れ、降車ボタンが押されると、バスに乗っていた私の勤務する学校の制服を着た生徒らが続々と降りていくのに合わせて、私も流れるようにバスを降りた。
海が近くて海風を防ぐものが存在しないのに、今日はほとんど風が吹いていなかったせいか、何だかこの蟠った気持ちは何処にも消えていきそうになかった。
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