第三話 いつもと違う日常
ベッドの上でうつ伏せになる豊。
今日だけで色々とありすぎて、濃密な1日を過ごした豊はもう動く気力さえなく、このまま寝落ちをしようかと目を閉じる。ふと脳裏には紗瑠の姿が思い浮かんで、だらしない笑みが零れる。
「暁烏さん・・・・・・可愛かったな・・・・・・」
そんな言葉が自然と口にすると、豊のスマホが振動した。連絡する相手がいない豊に、電話やメッセージが来る事は悲しいが親以外に誰もいない。一体誰だとSNSを開くと、それは驚くことにファミレスで連絡先を交換した紗瑠からのメッセージだった。直ぐに起き上がってメッセージを開いた。
『今日は豊さんと出会えた事は運命のようで、私嬉しかったです。これからも不束ものですがよろしくお願いします!』
「運命って、あれは衝撃的な出会いだったぞ・・・・・・。下手したら今日が命日になってたぞ・・・・・・」
紗瑠との出会いが脳裏に過ぎって、背筋に冷たいものが走った。
今では過去となったその出来事だが、襲われた時は終始心臓が早鐘を打ち続け、本気で今日死を覚悟したまであった。それも今では冗談を言えるくらいには、トラウマになることはなかった。
それよりも紗瑠という美少女と出会えて、会話する事が嬉しかったからだろう。そんな単純な豊かである。
紗瑠のメッセージの通りに、今日の事は運命と言っても過言ではない出来事だと思う豊。 とはいえ
豊は紗瑠に一言『こちらこそよろしく』と返信して、一旦
すると、再びスマホが振動し、紗瑠からの返信が来たのだろうと思った豊は画面へ目を向ける。
「ーーっ!?」
しかし、メッセージは紗瑠では無かった。
眠気も吹っ飛んだ豊は、スマホの画面を睨み付けた。
『君の行動には驚いたよ。せっかく舞台を用意してあげたんだから、殺し合ってくれなきゃ、客は退屈するよ。客は私だけだけどね。しかし、君を殺そうとしてた敵を仲間にするとはね。面白いことをする。だけどね? せっかく力を与えてあげたんだから、もっとその力を有効に使ってくれなきゃ困るよ。だからね? 次は別の舞台を用意してあげよう。次は君からその力を使わざるを得ない状況にするために。楽しみにしててよ』
豊と紗瑠を殺し合いさせるようと唆した
襲われた時の光景が一瞬だけ脳裏に過ぎって、身体が強ばった。しかし、恐怖心より、豊に沸き起こったのは怒りだった。
「また何か俺にっ! ふざけるなよ!!!」
今回は運がよく紗瑠と対話でき、お互い協力関係を結ぶことができた。だがそれはこれからも続くとは思わない。説得ができなかった場合はどちらかが殺されることになる。
勝手に巻き込まれ、理不尽に殺すか、殺されるか、二択を選ばされて、
スマホを睨み付けながら、怒りで文句を綴ったメッセージをタップしていき、返信をしようと送信ボタンを押す。しかし、画面には送信エラーが表示され、メッセージを送ることができなかった。
「一方的に送ってきたやがって! 一体誰なんだよお前は!?」
スマホの画面に向けて言葉を投げるが、当然返ってくることはないと思っていた。
すると、メッセージが送られてきて、
『このメッセージに返信する事はできないが、君の言葉は私に届いているよ。この私を誰と言ったね? そうだな・・・・・・私の事は神と名乗ろう。それか、君はもう知っていると思うが、この世界の人間は私を
「ちょっと待て! 今度は俺に何をさせる気だ!」
豊は
一難去ってまた一難。
自称神と名乗る
豊の視線の先にある天井を眺めて、ぼーっとしていると自然と溜息が漏れた。しばらくそうしていると、誰かが階段を上ってくる音を耳にした。豊の部屋の前に立ち止まり、ドアをノックした後に「入るわよ?」と声を掛けてきた。
ドアが開かれて、豊の母親が顔を出した。
「豊? 何かさっきから声が聞こえてたけどどうしたの?」
母親が怪訝な顔で尋ねてきて、先ほど豊が怒鳴っていた理由を聞かれる。
「え? あー・・・・・・」
「電話で誰かと喧嘩してたような気がしたけど?」
どう言い訳をしようか考える前に、母親は核心に近い事を疑ってきた。だが、豊には喧嘩するような友達は存在しない。しかし、ここは話を合わせようと言葉を紡いだ。
「まあ・・・・・・ちょっと、些細なことで言い争いしてたっつうか」
「あら? 豊に友達いないと思ってたんだけど、おかしいわね・・・・・・」
「ぐっ、俺って母さんにまで友達がいないって思われてたのかよ!?」
まさか母親にまで友達がいないことを露見されているとは思ってなかった。
「息子の事なら何でもお見通しだからね♪ だけど、もし豊に友達ができたのなら、その子を大切にしなきゃダメよ? それにもうすぐお兄ちゃんになるんだから、模範となる行動をするように」
「はいはい、わかってるよ」
いつもの母親の小言に豊は適当に返事する。
それから豊の視線は、母親のお腹の中に身籠もっている弟あるいは妹へ目を向けた。自分がお兄ちゃんになることに、豊は未だに実感が伴っていない。しかし、こうして目の前に新たな生命が宿っている事に、不思議な気持ちだった。
「豊の目つきがイヤらしいわ。もしかして、妊婦フェチなの?」
「そんな目で見てねぇよ!? てか妊婦フェチとかなんだよ。ただ、もうすぐ生まれてくるんだなって」
「ふふ、そうね。時々お腹を蹴ってくるのよ」
母親の嬉しそうな声色に、豊は今日の出来事を忘れ、自然と怒りも収まって、穏やかな気持ちになった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日、いつもの日常を過ごす豊は、欠伸を噛み殺して教室の中へ入った。自分の席に着いたが豊に友達はいないため、誰も挨拶を交わしてくる人はいない。
それとなく周囲を見渡してみるが、特に変化はなく、いつも通りの光景。豊以外のアナテマ使いは見た限りでは確認できない。アナテマを発動しない限り、見た目で確認する事はできないだろう。
スマホを確認すると、昨夜以降
(さすがにこんな場所で襲ってこないよな・・・・・・)
公の場では襲ってこないと思う反面、
一瞬でも、公の場だから安全という先入観は捨てた方がいいだろうと、豊は溜息を吐いた。
放課後になると、周囲に気を張っていた豊はいつも以上に疲労が蓄積していた。
いつもなら真っ先に帰る支度をして、一番に教室を出ていただろうが、豊はしばらく机に突っ伏していた。しばらくそうしていると、教室には数人程度が残って、談笑している生徒が確認できる。そろそろ帰宅しようと教室を出た。
結局、いつも通りの日常。豊を狙う人物は現れることはなかった。しかし、帰宅中に来襲してくる可能性もあり、気を緩める事ができない。これから毎日、周囲に注意を向けなければならないと考えると気が滅入る。
グラウンドから漏れ聞こえる一つの青春、周囲はいつもの日常を送って変わり映えの無い世界。同じ世界のはずが、豊だけが異質な世界に迷い込んだ、そんな錯覚に陥っている。実質、豊だけが別の世界の住人なのだろう。
「はぁ・・・・・・こんな世界望んだワケじゃないんだけどな」
青春を謳歌する男女の姿に、豊は羨ましげな眼差しを向けた。しかし、それも一瞬の事、視線を外して、気を引き締めて警戒を強めて歩き出した。
そして視線の先に、多くの生徒が校門に集まっていた。そのざわついた生徒達に訝しむ豊は、校門を通る必要があるため近づいていく。
横を通り過ぎる前に、騒ぎの中心となる人物へ一瞥した。その人物は
誰かを待っている様子の銀髪の美少女。
周囲の生徒達は銀髪の美少女と仲良くなりたいと、必死に話しかけているが、銀髪の美少女はそれらを無視している。総府高等学校にいる彼氏を待っているのだろうか。
ざわついていた理由に理解した豊は、自分には関係ないとそのまま校門を出ようとした瞬間。
「あ! やっと会えたよ豊♪」
霧葉女学園の銀髪美少女の視線が、校門を出ようとする豊の姿を捕らえ、駆け寄ると彼の腕を取った。周囲に警戒していた事もあって、突然の事に愕然とした豊の肩が跳ねた。声の方へ顔を向けると、銀髪美少女はあざとく小首を傾げて、満面な笑みを浮かべた。
見覚えのあった声と顔に彼女が紗瑠だと気付いた豊は、強張った身体を弛緩し、安堵の息を吐いた。しかし、まだ安心できないのが、紗瑠との距離感で、腕を抱いた状態での密着、しかも腕には柔らかい胸が当たっている。女子特有の甘い匂いも鼻孔をくすぐり、彼女いない歴=年齢の豊にとって、いつにも増して心臓が波打って刺激的である。
ふと冷静な部分の豊は、紗瑠に違和感を覚えた。
ーー昨日より親しさが増してないか? 距離感もほぼゼロ距離で近くなってないか?
内心ではそんな疑問を感じるが、それを実際に口にするより、まずは周囲の不穏な視線に気付いた。
「あ、暁烏さん?? え? あ、ちょ、ちょっとま、周りの目が・・・・・・」
騒ぎの中心へ巻き込まれた豊、突然登場した陰キャぼっちに当然周囲の生徒は不満な様子。なぜ霧葉女学園の銀髪美少女が、冴えない男と親しげに会話をしているのか。陰キャぼっちはお呼びじゃない。そんな圧を向けられている。
中には豊と同じクラスメイトの陽キャグループも視認する事ができ、豊の評価を落とそうと口を開き始めた。
「あいつ友達もいねぇぼっちだぞ?」「クソ陰キャのくせに調子乗りすぎじゃね?」「つーか、あの陰キャが霧女の生徒に付きまとってんじゃね?」「うわ、それ最低じゃん。ストーカー?」「マジかよ」「おい、陰キャぼっち野郎、さっさと失せろ」
陽キャグループからの誹謗中傷や侮蔑な視線が豊を突き刺してくる。ストーカーはさすがに否定するが、陰キャでぼっちということは本当の事だから否定できない。特に反論はしないが、早々にこの場から立ち去りたいと思っていた。
「・・・・・・・・・・・・」
すると、さっきまで甘い雰囲気を醸し出していた紗瑠の気配が変化した。豊を誹謗中傷した陽キャグループへ冷たい視線を向け、口を開いた。
「ぼっち? 陰キャ? そんな無意味でくだらないカテゴライズして、自分は優位に立っていると勘違いしているの? 品性の欠片もなく、ちっぽけなプライドにしがみついて、貴方たちに誇れるものがあるのかしら? 私、貴方たちのような人を貶める輩は嫌悪しか抱かないの。さっきから声を掛けられて、吐き気さえするほど我慢してたの分からなかったの? あ、それと豊と貴方たちでは全然比較できない程、豊は素敵な殿方よ。外見でしか判断できない貴方たちの目は節穴なんでしょうね。私は豊にしか興味ないの。だから私達の事は構わないで。それともし豊に何かあった場合・・・・・・許さない」
次々と紡がれる一方的な弁難、冷酷な表情、鋭利な刃物で抉るような視線、それは豊が最初に出会い、殺そうとしてきた紗瑠と同じ雰囲気を纏っていた。
周囲の有象無象をゴミのように見下し、それを受けた陽キャ達は言葉を発する事もできず、時が止まったように静まりかえった。隣にいる豊さえも絶句し、寒気に襲われたようにゾッとするほど。
そして、言いたいことを言い終えた紗瑠は、さっきの事はなかったように豊へ笑顔を向ける。
「ほら豊行こ?」
「あ・・・・・・はい」
甘い声を掛けられるも、豊は思わず敬語で返事をし、腕を引っ張られてされるがままその場から立ち去った。
帰路についた二人。
女子と一緒に帰る経験も無かった豊にとっては、憧憬を抱いていた青春の一つである。しかも紗瑠に腕を抱かれるという特典付きで、緊張していた。
嬉しさ半分、恐怖半分。
さっきの事を思い出せば、未だにゾッとする。もちろん紗瑠に庇われて嬉しい気持ちはあるが、疑問はいくつか残る。
「あの暁烏さん・・・・・・?」
呼ばれた紗瑠は不満顔で答えた。
「その呼び方、他人行儀で私イヤ。私のことは紗瑠って呼んでほしいな。いずれ、そういう関係になるんだし・・・・・・ね?」
女子と真面に会話した事がない豊が、下の名前で呼ぶなんてそんな一気に距離を縮めるような事をして良いのか困惑していた。他にも気になる言葉を耳にしたが、今の豊は下の名前を呼ぶことについて重要視して気にする余裕がなかった。
紗瑠の上目遣いで期待の籠もった視線を受けて、観念した豊は一度落ち着かせて口を開いた。
「しゃ・・・・・・紗瑠さん・・・・・・?」
「呼び捨てがいいのに・・・・・・。でも名前で呼んでくれたから及第点かな♪」
今の豊にはさん付けがせいぜいである。もし陽キャなら戸惑いもせず口にしていただろう。それにしても気になるのは紗瑠の機嫌の良さ。
「紗瑠さん・・・・・・今日は何かいいことでもあったの?」
「ん、にゃ? ふふ、いいこと? そんなの豊に会った事かにゃ?」
「うん? 今更だが・・・・・・呼び捨てになってるし・・・・・・、昨日とは別人というか・・・・・・」
昨日と態度が違う事に違和感を覚えつつ、何か企んでいるのではと少し警戒をしてしまう。ただ、協力関係を結んだのだから、昨日のように襲いかかってくることはないだろう。
態度が急変し、距離感が近くなったのも豊に一因するとは本人は知らず、戸惑うばかりであった。
そんな豊の疑問に笑みで返し、紗瑠は甘えた声を上げる。
「今度二人で一緒にどこかに行きたいな~」
「別にいいけど・・・・・・。俺でいいのか?」
「豊だからいいの。ふふ、カラオケとか、遊園地とか、ショッピングとか、まったり散歩でもいいし、豊と一緒なら楽しめるよ♪」
「それってーー」
まるでデートのようだと思った。しかし、これはあくまで友達と一緒に遊びに行くだけ。早とちりするなと豊は自分に言い聞かせて、
「・・・・・・ふふ、ふふふ」
色んな妄想が膨らんで紗瑠から含み笑いが漏れるが、豊は必死に自分の感情を抑えていて耳に届いてなかった。
しばらく会話が続き、豊はこうして女子と一緒に帰宅し、会話する日が来るとは思ってなかった。紗瑠の楽しそうに話す横顔を盗み見て自然と頬が緩んだ。
このひと時の青春を豊は望んでいた。できれば普通の日常で紗瑠と出会えていれば、どうなっていただろうかと、もしもの物語を空想した。
改めて気を引き締めた豊は、周囲に警戒を強めつつ、紗瑠と会話を続ける。
「豊? 何かあったの?」
ふいに豊の僅かな変化に気付いた紗瑠は疑問符を浮かべた。
「え? いや・・・・・・」
問われて口を閉ざした豊は誤魔化そうと、再び言葉を紡ごうとした瞬間、紗瑠が頭を振って、真剣な目と交わった。続く言葉がなく、豊は困った顔をした。
「豊が困ったことがあれば、どんな事でも相談して欲しいな。私が困った時は豊の事頼りにする。私と豊はそういう関係なんでしょ?」
確かに豊は紗瑠と協力関係を結んだ。相談のために昨日の事は伝えるべきだろう。ただ、自分の問題に巻き込んでいいのか躊躇した。
だけど何のために協力関係を結んだ?
相手は女の子でも
「豊と誰かを殺し合いをさせようと企んでるのね。私の時と同じだわ。・・・・・・
豊から事情を聞いて、紗瑠の中で決意を固めて言葉を続ける。
「その話を聞いて、どうして豊が疲れているのか、理解したよ。いつどこで襲われるかわからないからずっと気を張っていたんだね。でも安心して豊。あの
「ああ、そうか・・・・・・。気を張ってるだけ無駄に疲労だけが溜まっていくってことか」
「そういうこと。まあ中にはアナテマの力を手にして、調子に乗ってる連中もいるにはいるけどね。でも豊の事は私が守るか安心してね♪」
屈託ない笑みの紗瑠を目にして、豊は昨日の出来事について想起し、掌を見つめる。
「・・・・・・こんなに不安に思うのは自分が弱いからだよな」
紗瑠は念動系の能力を熟知し、基本的に二本の刀を操った独自の戦闘スタイルである。
紗瑠曰く、一番しっくりくる戦い方と話していた。それだけ経験を積んで、修羅場をくぐり抜けてきたんだろう。それは逆に、多くの命を奪わざるを得ない状況に立たされた結果、強くなったと言える。
もしかするとこの先、豊も手を赤く染める状況を選択させられるかもしれない。そんな状況にならないためにも、豊は殺す手段を回避する道を模索し続け、考えなければならないだろう。これからのことを思うと気が滅入る。
豊が難しい顔をして溜息を吐いていると、紗瑠は少し不満顔で豊の片頬を摘まんだ。
「豊がそうやって色々と考える事は良いことだけど、今は豊疲れてるんだし、考えるのは禁止。もっと私の事を構って話しかけて欲しい」
「わ、悪い・・・・・・」
片頬を摘ままれた状態で言い、可愛い女子にそんなことされて、気恥ずかしくなった豊は視線を逸らす。紗瑠は摘まんでいた頬を離して、口元に手を当てて豊を愛しげな目を向けて。
「あは、豊って可愛い♪」
「か、からかうなよ」
こうして紗瑠と会話するだけで豊は嬉しいと思っていた。今日は紗瑠の色んな一面を目にして、ますます疑問は増えていく。
ーー特別何もしてないのに、なぜこうも好かれているのか。
昨日出会ったばかりだから、豊の中ではもちろん心当たりは全くない。だから豊自身が紗瑠に対して告げた言葉が原因ということは、あの時必死に説得していた豊には覚えているはずもない。
豊は疑問を抱いたまま、紗瑠は質問する。
「豊って休日はなにしてるの?」
「え? ああ・・・・・・ゲームかアニメ見てるくらいしてしてないかな」
「ふーん・・・・・・」
休日の過ごし方について尋ねた紗瑠はスマホを手に、メモしていく。メモし終わると今度は別の質問が投げられる。
「それじゃー好きな食べ物、嫌いな食べ物は?」
「好きな物は・・・・・・唐揚げとかかな。嫌いな食べ物は基本的にないけど?」
「ふむふむ。では家族構成は?」
「? 父さんと母さんと俺の三人だけど、今は母さんのお腹の中に赤ちゃんがいるんだ」
「え? それじゃあ豊に弟か妹ができるって事? おめでとうございます! 今度会わせてくれません?」
「別にいいが・・・・・・ん?」
それは両親と紗瑠が顔を合わせることになる。別に恋人を紹介するワケではないが、絶対に両親はからかってくる。やっぱり断ろうと思った豊だが、紗瑠の嬉しそうな顔を見て、言葉を呑み込んだ。赤ちゃんと合わせるだけだし、別にいいかと思った。
「いずれ豊のご両親に挨拶する必要があるよね・・・・・・。ふふ」
小さく囁かれた紗瑠の言葉、想像して一人身悶えるその様子に豊は気付いておらず、両親にどう説明したらいいのかと考えていた。
それから二人は同じ地区に住んでいる事実に驚愕し、分かれ道まで他愛ない話が続いた。その頃には豊の精神的な疲労が少し回復していた。紗瑠が気を使って、アナテマや
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます