第11話

 笑顔の葉子は話しを続けた。


「ふふ。そう言えば、死神さんはどうしてこんなにも早く私の所へ現れたの?」


「先程も言ったように、本来なら貴方は私の姿はまだ見えていないはずなのです。」


「そうだったわね、姿見えないままでも私の傍にいるの?」


「はい、今回だけは特別でして。」


「特別?」


「はい、私にとって貴方は初めて担当する人間なんです。」


「初めて?初仕事ってことね。」


「はい。魂を迎えに来る時期は、本来なら死ぬ間際やもしくは死んでしまってからでも間に合うのです。」


「そうなんだ。」


「しかし、今回の私の様に初めての担当する場合は、その担当する人間の亡くなる1ヶ月前から傍につき、その人間を観察する事が義務づけられています。」


「観察?」


「はい、人間を理解する為だそうです。」


「そうなんだ、ずっと傍にって事は、着替えとかも?」


「え!そ、それは。」


 ソードは凄い慌てようだ。


「ふふ、顔真っ赤よ。」


「いや!着替え中はもちろん外に。」


「わかったわ、信じるわ。」


「本来なら対象が女性の場合、女性型の死神がつくのですが、今回は手違いがあったようです。」


「ふーん、手違いか。」


「はい。」


「女性の死神もいるんだ、女性型って?」


「私たち死神には基本的に性別の概念はないのです。」


「付き合ったり、結婚したりしないの?」


「最近は人間の真似事をして、恋仲になろうとする死神もいますが、死神は恋も結婚もしないです。」


「子供も作らないの?」


「はい、死神に子供はいません。皆今のままの姿で生まれ変わります。」


「生まれ変わる?」


「私たちは元々こちらの世界の生き物でした。死んで死神として生まれ変わった姿なのです。昔の記憶はありませんが。」


「そうなの?」


「はい、そして寿命もありません。」


「死なないの?」


「はい、ただし与えられた力を使いすぎると消えてしまうらしいです。」


「らしい?」


「話しを聞いただけで、見た事も経験した事もありませんから。」


「ふーん、消えてしまうのね。」


「使いすぎなければ問題はありませんが。」


「そうなんだ、恋もしないなんて寂しいわね。私が言うのもなんだけど。」


 葉子は寂しそうに笑った。


「葉子さんは恋をしなかったのですか?」


「ふふ、したわよ。」


「どんな方でしたか?」


「ええ?!そうね……、中学生の時だったかしら。幼馴染の男の子にね。あー、懐かしいなぁ。」


「その方とはどうなったのですか?」


「中学3年の時に急に入院しちゃったから、しばらくお見舞いにも来てくれていたけど、次第にお見舞いの回数が減ってきて、そのまま来て貰えなくなったわ。それからずっと会ってないの。」


「会いたいですか?」


「今?……いいえ、会いたくないわ。もう10年も前よ。会うのは怖いわ。」


「そうですか」


「その頃一緒に学校に通っていたけど。迷惑ばかり掛けていたから自分から距離をおいていたの。もっとお話ししたかったな。」


「……、話しは変わりますが死神にも色々な死神がいまして。私の先輩は死ぬ間際にその人のしたい事を叶えてあげる様にしているそうです。」


「いい方ね。」


「真似する訳ではないですが、私にもさせてもらえませんか?」


「私のしたい事?」


「はい。今言いましたよね。もっとお話ししたかったって。じゃあ、話しましょうよ。」


「え?さっきも言ったじゃない、今は会いたくないわ。」


「今のその人に会うのが怖いなら、その頃のその人にならどうですか?」


「どういう事?」


「戻るんですよ、過去に。」


「過去に……?」


 つづく

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