第91話強制休養
「もうこの程度で許してやったらどうだ。
これ以上やると恨みが深くなるぞ」
私にケンカを売った愚か者の実家は、二階級降爵とされ、領地も全て召し上げられ、宮廷貴族に成り下がりました。
領民が全員領地から逃げ出して、我々新興城伯家に移住してしまったのですから、それもしかたがない決定です。
「そうでございますね。
もう十分恨まれていますが、不必要に恨みを深くすることもありませんね。
分かりました、明日から狩りに復帰します」
「そうか!
それは楽しみだ!
属性竜が狩れるようにサポートを頼むぞ」
ヨジップ殿下が私の決断を聞いてとてもうれしそうです。
まあ、それもしかたがないですね。
私が仮病で狩りを休んでいる間は、大魔境で属性竜を狩る事が禁止されていたので、少しイライラしていたようです。
亜竜は狩っていたようですが、やはり亜竜と属性竜では強さが段違いですから、心から強くなりたいと願っているヨジップ殿下には、苛立たしい時間だったでしょう。
それに、仮病とは言いましたが、実際には仮病ではありません。
無理をすれば大魔境に行く事はできますが、本当の力は発揮できません。
身体強化した身体と、頭と心が把握している身体が、違い過ぎるのです。
頭と心と身体を一致させるまでは、安全な後方で訓練しなければいけません。
それに、武器の問題もあります。
私は多くの武器を失ってしまいました。
これからも属性竜を狩るには、失った属性竜牙骨真銀槍はもちろん、亜竜牙骨真銀槍も魔獣牙骨真銀槍も大量に必要になります。
ですが、属性竜牙骨真銀槍はもちろん、亜竜牙骨真銀槍も魔獣牙骨真銀槍もそう簡単に作れるものではありません。
名人達人級の職人が、時間をかけて精魂込めて作るものです。
俺かな者達は、能書筆を択ばずとか、善書は紙筆を択ばず等とほざきますが、命懸けの戦いでは、ほんのわずかな武器の優劣や、手のなじみが生死を分けるのです。
名人達人ほど道具を必死で選ぶものです。
適当な道具で書くときは、適当な結果でいい、ほどほどでいい、そう考えている時なのです。
そのような覚悟で書いたモノを渡せば済むと、低く見られている事を自覚できない、本当の馬鹿の言葉です。
だから、既存の武器では役に立ちません。
皇室や名門功臣家や大富豪が持っている、家伝の名槍であろうと、私の手に馴染まない、バランスの悪い槍では役に立たないのです。
他の新興城伯、イヴァンやダニエルが予備の槍を分けてくれると言っても、それでは十分な力が発揮できないのです。
だから、馬鹿な側近達が私にケンカを売ってこなかったとしても、私は狩りを休まなければいけなかったのです。
だからヨジップ殿下は、いえ、皇室も皇国も、全ての槍職人に私の槍を最優先で製作するように、強制命令を下したのです。
それでも、私の手に馴染む槍を創り出せる職人は少ないのです。
私が手に馴染まないと受け取りを拒否した槍が、莫大な価格で競売にかけられる結果になりました。
その数は百を越えるほどの数となりました。
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