第50話疲労困憊

「凄いね!

 本当にまた属性竜を斃してしまったんだね!

 幸運で属性竜を斃してのではなく、実力で属性竜を斃したことが証明されたね。

 これからはどのような場所でも堂々と構えていればいい」


 興奮するレオン第四皇子が鬱陶しいです。

 役目に間に合いように、本当に無理して戦ったので、疲労困憊なのです。

 生活魔法や回復魔法を使って、身嗜みは整えましたが、精神的な疲労まで完全に回復できたわけではありません。

 できればもっと静かにして欲しいのです。


「だが、今回は素材の損耗が激しいな。

 前回の属性竜よりも強かったのか?

 それとも夜間で奇襲に失敗したのか?

 いったいどうなっているのだ?」


 なぜか私にばかり質問してきますが、私には返事をする気力がありません。

 レオン第四皇子の子守りは、ジョージ様かマルティン様の担当でしょう。

 私が視線を送って頼んだのですが、残念ながら二人とも私以上に疲労困憊です。

 元々の身体強化の差と、年齢による体力気力の低下で、お二人は私やイヴァンやダニエルよりも、属性竜との実力差が大きいのです。

 仕方ありません、私がこたえるしかないでしょう。


「殿下、もう少し令嬢に気遣いを見せないと嫌われてしまいますよ。

 役目の時間に間に合わせようと、かなり危険な狩りになったようです。

 殿下のお目を穢さないように、急ぎ身嗜みを整えましたが、ジョージもマルティンも殿下の御下問に答えられないほどです。

 ラナ嬢も本当はその場にへたり込みたいくらいなんですよ」


 ドウラさんが私達のために足をこの場に運んでくれたようです。

 まだ治療の途中で、完全に身体が回復していないのに、ありがたい事です。

 ドウラさんに諌言で、自分が愚かな行為をしていたのに気がついたのでしょう。

 レオン第四皇子が赤面しています。


「それは申し訳ない事をした。

 ドウラ城伯にも病をおしてここに来させてしまったようだな。

 今日の検分は中止するから、十分な休養をとるように」


 正直レオン第四皇子の言葉はありがたいです。

 今の体調では、自信を持ってレオン第四皇子を護るとは言い切れません。

 ですが、それでお咎めを受ける事はないのでしょうか?

 属性竜の素材を献納させられるのも嫌です。

 何とか役目をちゃんと果たしたように、誤魔化す事はできないでしょうか?


「いえ、それではこの子達が陰で何を言われるか分かりません。

 殿下に慈悲の心があるのなら、私にこの狩りの状況を説明させてください。

 今度は真正面から消耗戦となって狩った属性竜です。

 この戦いを綿密に研究することで、厄竜を迎え討つ際に役立ちます」


「おお!

 それは何より大切な事だ。

 詳しく説明してくれ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る