第40話死病

「ドウラさん?

 ドウラさん!

 しっかりしてください!」


 突然私達の前でドウラさんが倒れられました。

 強いアルコール臭がしていましたから、酔っているのかもしれませんが、自分に厳しいドウラさんにしては最近の行動がおかしいです。


「心配するな。

 お前達はそのまま狩りを続けろ。

 ドウラや俺がいなくても問題なく狩れるだろう」


 ジョージ先生が平然とされています。

 エマとニカが凄く心配そうな顔をしています。

 事情を知っているに違いありません。


「でもジョージ先生、先生もエマとニカも可笑しいです。

 この状態では思わぬ不覚を取りかねません。

 撤退して事情を聞かせてください」


「その通りです、父上。

 ここは一旦引きましょう」


 マルティン様も私に賛同してくれています。

 イヴァンとダニエルもうなずいて同意してくれています。


「分かった。

 帰って話そう」


 帰ってからマルティン様が全てを教えてくれました。

 信じられない、信じたくない話でした。

 ドウラさんが死病に取り付かれているというのです。

 今手に入る薬では、絶対に治らない死病だそうです。

 持っているのは皇族かよほどの有力者だけで、厄竜が何時現れるか分からない現状では、どれほど金を積んでも売ってくれないそうです。


 ドウラさんほどの実力者で大金持ちでも、手に入らない薬。

 亜竜種を素材にした薬でも、延命と鎮痛が精々で、今ではその効果も落ちてきていて、強い酒と併用しなければ鎮痛効果が現れないそうです。

 自分に厳しいドウラさんが、常に強いアルコール臭をさせてた原因が、今ようやく分かりました。


「ただ全く可能性がないわけではない。

 厄竜がもたらした死病だから、同格の属性竜から作った薬なら、完治が可能だ。

 お前達の力で属性竜を狩れるなら、ドウラを治すことができる。

 それを肝に銘じて、常と変わらない状態に心身を保ち、明日からの狩りに備えろ」


「お願いします」


「おばあちゃんを助けてください」


 マルティン様の説明の後で、エマとニカが交互に私達に頼みます。

 沈痛な表情で、深々と頭を下げ、お願いするのです。

 私達は決意を新たにしました。

 今の私達があるのは、全てドウラさんのお陰です。

 ここで恩返ししないでいつするというのですか!


 私達は本気になりました。

 本気で、死ぬ気で属性竜を探しました。

 今迄がいい加減だったというわけではありません。

 今迄も本気でしたが、命を賭けてまでの本気ではありませんでした。

 安全マージンを大きくとった本気から、安全マージンを低くして、虎穴に入らずんば虎子を得ずの気持ちで捜索したのです。


 そうです、捜索重視の狩りにしたのです。

 どこにいるのか分からないのが属性竜です。

 まず属性竜を探し出さなければなりません。

 今迄のように、収入のために狩りを優先した捜索を止めたのです。

 魔力を温存して捜索するために、狩れる亜竜を全て見逃して、朝から夕刻まで属性竜を探し回り、帰る時に属性竜を見つけられなかった怒りをぶつけるように亜竜を狩りました。

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