第39話身体強化

「これは重宝するね。

 それにこれを公表すれば値崩れの心配もなくなる」


「ふむ。

 だが情報は貴重だ。

 いや、貴重以前に命にかかわる事もある。

 切り札としてとっておかないのか?」


「ふん!

 それは騎士や戦士の考え方だよ。

 私は冒険者だからね。

 獲物を高く売るのが最優先だよ。

 アンタは騎士としてここにいるのかい?

 それとも冒険者としてここにいるのかい?」


「分かった、降参だよ。

 城代にも大臣達にも、俺が責任を持って報告する。

 ドウラは冒険者クランに報告してくれ。

 ドウラの報告なら誰も疑わんだろう」


 今日はとても驚愕の発見がありました!

 皇国の、いえ、世界を変えかねない大発見です。

 もともと魔獣や魔竜が魔法薬に素材になる事は知られていました。

 実際そのお陰で、私達が狩った魔獣や魔竜は驚くほどの高値で買い取られます。

 ですが、今日、それ以外の大発見があったのです。

 魔竜の肉を食べるだけで魔力体力が回復し、身体強化までするのです。


 特に身体強化について調べようとしていたわけではありません。

 たまたま大量にある鉤竜の肉を食べたのです。

 自分達だけでなく、クランメンバー全員に、それこそ入ったばかりの新人にも。

 常識外れな事だとは、重々承知しています。


 ですが、ドウラさんが、若い子達のやる気を維持するためにも、狩り過ぎた魔竜の肉を消費するためにも、月に一度くらいは振舞ってやろうと言われたのです。

 酔っておられたのかもしれません。

 最近お酒を飲まれる姿を見かけることが増えました。

 狩りの時も、二日酔いで辛そうにされている時があります。


 ですが、その非常識な大盤振る舞いが、とんでもない衝撃の事実を、発見する事に繋がったのです。

 入ったばかりで、まだ一度も狩りに参加したことがなく、身体強化の経験もない新人が、鉤竜の肉を食べただけで身体強化したのです!

 食事会の場は騒然としました。


 食事会は突然緊急幹部会となり、身体強化の原因を研究することになりました。

 でも誰もが分かっていました。

 原因が鉤竜の肉を食べた事だと。

 その場で新人達にドンドン鉤竜の肉を食べさせました。

 もう、美味いとか貴重だとか高価だとかは二の次三の次です。


 その日のうちに、鉤竜の肉を食べるだけで、亜竜を斃さなくても、身体が強化されることがはっきりしました。

 その日から、検証を重ね、正式な研究として発表するための、追実験が繰り返されました。


 早い話が、新人に狩りをさせずに、毎日三食鉤竜の肉を食べさせたのです。

 どの部位をどれくらい食べさせたら身体強化するのかを、繰り返し検証しました。

 これで亜竜種の肉の相場は高止まりすることになるでしょう。

 どれほど狩っても値崩れの心配がなくなりました。

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