第37話禽竜
ハンドサインに従い、禽竜を一頭だけ誘い出す。
マルティン様、私、イヴァン、ダニエルの四人が前衛で、ジョージ様とドウラさんはエマとニカの護衛だ。
全長が十メートル、体重が四トン以上ある禽竜だ。
素材として、できるだけいい状態で斃すには、首を下げさせる必要がある。
亜竜種ではあるが、禽竜は草食だ。
魔素が大量に含まれた魔樹を主食にしている。
だからといって弱いわけではない。
肉食の亜竜種より弱いというだけで、人間には大敵である。
特に嘴と前脚の爪による攻撃は、人間など簡単に切り裂いてしまう。
不意に放たれる尻尾の一撃も油断ならない。
補助魔法の重ねかけで素早くなった身体を有効に使い、禽竜が嘴で私を攻撃するように誘う。
禽竜が地上から攻撃できる高さにまで頭を下げた時を狙いすまして、マルティン様、イヴァン、ダニエルが眼から脳を狙う。
絶妙な角度とタイミングが必要で、どうしても一撃で斃す事はできなかった。
痛みで禽竜が絶叫をあげる。
これでは他の禽竜が逃げてしまうが、しかたがない。
最初から全て上手くいくはずがない。
今迄が幸運過ぎたのだ。
いや、時間をかけて万全の準備をドウラさんが整えてくれていたのだ。
私のせいで急がなければいけなくなってしまったのが原因だ。
マルティン様が諦めずに禽竜の眼を狙う。
嫡男であるマルティン様が一番実力が劣る事は、道場としてもクランとしても大きな問題だから、必死で努力されています。
ジョージ様とドウラさんもその事を考慮して、マルティン様に止めを刺す機会を与えていますが、なかなか追いつけていません。
「やったぞ!
すまん、ありがとう。
止めを譲ってくれた事、心から感謝している」
私達がわざとマルティン様に止めを刺させたことを理解されています。
それくらいの実力はつけているのですね。
私達より安全マージンを小さくして、死と隣り合わせの狩りを重ねられている成果が、今日ここにでています。
「気にしないでください、兄上。
兄上に強くなっていただかないと、余計な波風が立ってしまいます」
「そうそう。
兄貴に準男爵になってもらわないと、俺達の出世も制限されるからね」
イヴァンとダニエルも士族家の部屋住みだけあって、嫡男が優遇されることに何の疑問もないようです。
「ボケっとしているんじゃない!
今の断末魔を聞いて、鉤竜の群れがやってくるよ!
下手すりゃ暴竜まで集まってくる。
鉤竜なら手あたり次第に狩りな。
暴竜が来たらエマとニカに任せるんだ。
だが不利と感じたら撤退するからね。
遅れるんじゃないよ!」
「「「「「はい!」」」」」
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