第35話属性竜

「属性竜ですか?!」


 私は思わず声をあげてしまいました。

 ジョージ様に相談したのは、もっと穏やかな答えを期待してです。

 命懸けとは言いましたが、命懸けの桁が違います。


「ああ、属性竜だ。

 属性竜が狩れるような戦闘侍女、いや、後宮騎士が求められている。

 厄竜の恐怖を感じているのは後宮も同じだ。

 属性竜を狩れるような護衛を、喉から手が出るほど求めている」


「二度の強制出仕で大量の実力者を召し抱えたのではありませんか?」


「確かに召し抱えたさ。

 だが実際に竜を狩ったのは魔法使いだ。

 チームで協力して亜竜種を狩った冒険者はある程度いる。

 だが属性竜を狩ったモノはいない。

 前衛職だけで、しかも後宮に入れる女性で、亜竜を狩った冒険者はいない

 俺も亜竜は狩ったことがあるが、属性竜はない。

 そもそも属性竜を探し出すことすら難しい」


「その属性竜を狩れと言われるのですか?!」


「単独ではない。

 前衛職だけでもない。

 魔法使いを加えたパーティーでの狩りだ。

 『破竜隊』に何人かの手練れを加える。

 もちろん俺も加わる。

 属性竜を狩れる機会など、もう二度とないかもしれないからな」


 ジョージ様に皇都との交渉をお任せしたのですが、とんでもない話になりました。

 属性竜を狩る!

 冒険者になろうと思った時には、考えもしなかった事です。

 あの時は、何年もかけてでもレイ家の借金さえ返せればいいと思っていました。

 亜竜ですら狩れるとは思っていませんでした。

 いえ、亜竜種に挑む気さえありませんでした。

 それが、今ではドラゴンスレイヤーです。

 それを誇りに思っていましたが、こんな面倒ごとになるとは!


「そんな顔をするな、その分報酬はでかいぞ。

 属性竜の骨革鱗鎧、属性竜牙剣、属性竜牙槍を持っているのは、王侯貴族か属性竜を狩った者だけだ。

 それを装備していれば、後宮でも一目も二目を置かれる。

 嫌がらせや毒を盛られる可能性が低くなる」


「低くなるだけで、嫌がらせや毒殺が、もれなくついてくるんですか?!」


「後宮とはそう言う所だ。

 それは諦めろ。

 だが場合によれば、後宮限定ではなく、政宮にも出仕する、正規の近衛騎士になれるかもしれない。

 属性竜を斃すというのは、それくらい大きな名誉なのだ。

 腹を括れ。

 その代わり、狩れたら最初から士族の最上位、准男爵として召し抱えられる。

 まあ、その分軍役も四十人あるが、それは冒険者の子供を連れて行け」


「分かりました」


 頭と心が混乱していますが、ジョージ様にお任せしたのです。

 やるしかありません。


 

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