第34話人殺し
「そうか、殺しておけ。
その方が後々面倒がない」
「ですが、こいつは皇国の正使です。
殺す方が面倒ではありませんか?」
ジョージ先生が怖い事を言います。
もう殺人に禁忌などありませんが、殺人狂でもないのです。
好き好んで人を殺そうとは思いません。
「大丈夫だ。
皇国の正使とは言っても、勅命でも重臣総意の皇国命令でもない。
皇族の誰かが出した、勅命に見える令旨か宣旨だろうな。
こいつが勅命と言った時点で、皇帝陛下の恩名を騙ったことになる。
間違いないく処刑対象だな」
うわぁ。
小便ちびってるよ。
こんな小物が勅命を騙ったんだ。
皇国ってこんなに腐ってたんだ。
ますます仕えるのが嫌になっちゃったよ。
「では、先生が処刑するわけにはいきませんか。
罪を明らかにするためにも、徒目付組頭の先生に処刑していただきたいです。
どうしても必要な人殺しも厭いませんが、好き好んで人を殺したいとは思いませんから」
「構わんが、それでは裏取引ができなくなるぞ」
「裏取引ですか?」
「そうだ。
こいつの罪を明らかにして処刑すれば、裏で動いていた皇族も形だけは処分しなければいけなくなる。
そうなると、ラナの出仕を有耶無耶にできなくなる。
皇帝陛下や重臣の方々が皇族の罪を少しでも軽くしようとした場合、ラナを出仕させようとしていたが、手続きを間違えただけという事にするだろう。
ラナは今度こそ勅命で後宮入りしなければいけなくなる」
「……どっちが世の中のためになるでしょうか?
いえ、レイ家のためになるでしょうか?」
「ラナの価値観しだいだな」
「私の価値観ですか?」
「ラナが何を一番大切をしているかだ。
皇国での出世を目指し、謁見の可能な騎士家を目指すのか。
それともひたすら金儲けを目指すのか。
それとも、両方を適度に得たいのか。
あとは、実父のホセイ家を復活させたいのかだな」
「できるのですか!
父上のホセイ家を復活させられるのですか!?」
「交渉次第なだ。
だがそうなると、親子出仕と大差なくなる。
貧乏暮らしに戻ることになる。
まあ、莫大な貯金があるだろうから、馬鹿な散財さえしなければ、数代は金に困るような事はないだろうがな」
「先生のお力で、お目見え以上で召し抱えてもらう事はできないでしょうか?」
「不可能ではないが、厳しい道になるぞ。
今まで以上に命懸けになる。
その代わり、上手くいけば最初からお目見え以上での召し抱えになる。
ヴィクトルも徒士組頭に取立てられるだろう」
「それでお願いします。
命を賭けて指示通りにいたします」
本当に今まで以上に命懸けでした。
それと正使は、勅命を騙った罪で、ジョージ先生が徒士目付組頭として魔都城代に提訴し、皇都の裁きを待って処刑されました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます