第33話強制仕官命令

「貴殿がレイ徒士家令嬢ラナ殿か」


「はい、左様でございます」


「うむ。

 皇国からの命令を伝える。

 本日より後宮務めを命ずる」


 はぁ?

 この馬鹿は何を言っているんだ?

 莫大な収入のある今の生活を捨てて、薄給の生活を選ぶわけないじゃん。

 皇都で貧乏に喘いでいる時ならともかく、今は有り得ない。

 でも、過去に強制仕官させた皇国です。

 辞退するには正当な理由が必要ですね。


「恐れ多い事ですが、それは無理です。

 後宮で頂ける給与では、今の生活は維持できません」


「なんだと?!

 そのような身勝手が許されると思っているのか?!

 四の五の言わず、直ぐに皇都に行くのだ!」


 本当に身勝手な奴ですね。

 こいつ相手に何を言っても無理ですね。

 伝手を使いたいですが、たいした伝手がないのですよね。

 それに不意打ちで来たので、事前対策ができていません。

 時間稼ぎをして、ドウラさんに相談しましょう。


「では義父上はどうなるのですか?

 皇国では親子出仕を認めていません。

 義父上も強制仕官させられています。

 強制仕官させた義父上を、何の落ち度もなく、忠誠を尽して仕えている義父上を、今度は強制免職させるのですか?

 それが皇国の法ですか?

 それとも使者殿の独断ですか?

 私にも僅かとは皇国重臣の方々と繋がりがあります。

 事の経緯を調べて頂き、罪のあるモノを処断して頂きますぞ!」


「おのれ、おのれ、おのれ!

 徒士家の娘ごときが、男爵の私を愚弄するか?!

 身の程を知れ!

 黙って言う通りにすればいのだ!」


 馬鹿だ。

 本当の馬鹿だ!

 今の言葉は私を侮辱した事になる。

 なるかな?

 まあいいです。

 無理矢理にでも侮辱された事にしましょう。


 バッチーン


「なぁ!?」


「男爵殿とは言え、それはドラゴンスレイヤーに対する侮辱ですね。

 これは名誉にかかわる大問題です。

 今、私の決闘申し込みを受けられましたね。

 今直ぐに決闘して頂きましょう!」


「な!

 なにを言っている!?

 そんな事を受けた覚えはない!」


「そうはいきませんよ。

 使者殿も貴族でしょう。

 決闘の作法を知らないとは言わせません。

 頬に白手袋を叩きつけられて、決闘を受けていないなんて通じませんよ」


 後は簡単な話です。

 さすがに使者を殺す訳にはいかないのです、後で治癒魔法で治すのを前提に、顔が二倍に腫れあがるくらいタコ殴りにして、四肢の骨を関節で砕いてやりました。

 さんざん脅してやりましたから、これで諦めると思うのですが、粘着質で復讐しに来る可能性もあります。

 私に直接来るならどうにでもなりますが、皇都に家族に八つ当たりされては困るので、ジョージさんに相談する事にしました。

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