第26話指揮官
「ラナ、今日はあんたが側近連中を鍛えてやんな」
「え?
私が指揮官をやるんですか?
全く自信がありません。
ゲイツクランの副将は、イヴァンとダニエルがいれば、大丈夫ではないのでしょうか?」
「視野が狭いよ。
誰がゲイツクランのためだといった。
女性冒険者のためだよ。
新人の女性冒険者が、質の悪い冒険者に喰いモノにされないように、あんたがパーティー長をやれるようになっておくんだよ」
「……はい、分かりました」
即答できませんでした。
あまりにも想定外の話です。
毛ほども考えていなかったことです。
だから即答できませんでした。
でも、ドウラさんの言う通りです。
もし、ゲイツクランに入れて貰えていなかったら。
もし、ドウラさんが参加してくださっていなかったら。
私が今どうなっていたかを考えれば、背筋が凍ります。
ドウラさんに憧れるなら。
ドウラさんのような女性になりたいのなら、やらなければいけない事です。
私はイヴァンとダニエルが預かっていた側近を交互に預かりました。
イヴァンとダニエルが、一つの側近パーティーを専属で預かっていたのに、私は二つのパーティーを交互に預かりました。
全然扱いが違います。
理由は想像できます。
ドウラさんが最初に言葉にした通りなのでしょう。
イヴァンとダニエルは、ゲイツクランの副将として、決まったパーティの戦闘力を向上させることを一番の目標にしています。
ですが私は、常に新人女性冒険者が加わることを想定しています。
だからマルティン様の側近だけではないのです。
常に初めて組むゲイツクランの団員を加えて練習です。
まあ、私のための補佐役ともいえる団員です。
不測の事態に対処できるようにしてくれているのでしょう。
ですがとても大変でもあります。
全く経験も考え方も違う人間を指揮しなければいけないのです。
側近達は、マルティン様とゲイツ槍術道場を最優先に考えていますが、私は自分の家族の事が最優先です。
毎回違うクラン員が何を大切にしているかは、私には分かりません。
だから追い込まれた時の反応が予測できません。
「今日はいつも通り魔鼠を狙いますが、今迄の魔鼠よりも大型種です。
雑食性で人間も食べます。
牙とまでは言いませんが、強力な歯を持っています。
噛みつかれないように。
どうしても避けきれないのなら、急所以外を噛ませるように誘導してください。
そろそろ自分だけでなく、周りに対する目配りができるようになってください」
ドウラさんは私にも厳しいです。
戦う種族を変える時は、イヴァンとダニエルではなく私にさせます。
マルティン様と同じように、期待してくれているのなら、愛してくださっているのなら、うれしいのですが……
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