第18話義父からの手紙
「ありがとう。
本当にありがとう。
そして、ごめん。
本当にごめん。
心から情けなく思う。
本来なら私が稼がなければいけないお金なのに、ラナに払わせてしまった。
親として情けなく恥ずかしく思う。
こんな親が何か言うなどおこがましいが、恥を忍んで言わせてもらう。
もう帰ってきたらどうだ。
家の借金はラナが返してくれた。
別に貯金もあるのだろ。
ラナの事だから、妹達の持参金も蓄えてくれているのだろ。
もう十分ではないのか。
それは自分の持参金に使えばいいのではないか。
八年だ。
八年すればクリスティアンがラナと同年になる。
ラナを見習って道場で頑張っている。
今の皇国では、実力がなければ家督継承は許されない。
実子が無能なら、娘に実戦経験のある男を婿に迎えさせる。
だからクリスティアンも魔都に行かせる。
他の家のように最低限の経験ではすませない。
一人前の冒険者に育てる。
頑張って稼いでくれると思う。
それまでは、どうしても必要なら、借りて凌げばいい。
だから帰っておいで。
ニコラは待っているよ。
二コラはラナの事を待って、未だに婚約者すら決めていない。
早く帰っておいで」
義父から手紙が来ました。
端的に言えば、借金返済のお礼と詫びに加え、帰ってきて結婚したらどうかという、何とも言いようのない内容です。
お礼と詫びは義父らしい。
心配して帰ってこい、結婚したらどうかも義父らしい。
私の事を心配してくれているのは確かです。
以前の私なら、煩わしいと思いながらも従っていました。
そういう生き方が、徒士家の娘として当然だとも思っていました。
だが今は違います。
以前とはまったく考え方が違っているのです。
女であろうと、世の中の役に立てる確信できました。
自分の力が、病の人を助ける一助になると分かったのです。
そして、それを誇りに思える自分がいます。
それに、今の私から見れば、元婚約者のニコラは頼りなく見えます。
軟弱者とほほを張りたくなります。
ニコラが徒士家の跡取りとして、無茶ができない立場なのは分かります。
最低限の経験を積んで、家督継承に備えなければいけないのも理解します。
ですが、それでも、もう、男性としては見れません。
全然魅力を感じられなくなりました。
私は返事を書きました。
やりがいのある冒険者を止める気はないと、はっきり書きました。
それと、少し迷いましたが、ニコラの件もはっきりさせました。
私は冒険者として十二分の経験があり、実力のある人を夫に選ぶと。
冒険者の経験がある義父上と母上なら、理解してくれるでしょう。
「ラナ、大ダンジョンに行くよ。
ルカから魔甲蛇の鱗の依頼が入ったよ。
手に入ったら魔甲蛇鱗鎧がゲイツクランの名産品になるよ」
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