第14話ギルド改革

「どうだい、こういう革鎧は創れないかね?」


「なるほど、これはなかなかの防御力ですね。

 しかしこれを作るくらいなら、従来の鱗鎧を作られた方が、防御力も費用も抑えられるのではありませんか?」


 ドウラさんがゲイツクランの専属職人と、今度作る鎧の相談をされています。

 これもドウラさんが行ったゲイツクラン改革の一つです。

 今迄は武器も防具も全て外注されていました。

 その方が費用が抑えられるし、何より各ギルドともめません。

 自分の所で武器や防具を作り売りとなると、既存の武器職人や防具職人と顧客の取り合いとなり、安売り合戦になってしまいます。

 そう言う事を防ぐためにも、各ギルドが職人の人数を制限したのです。


 でも、ドウラさんの考えは違います。

 現実には職人の利益を圧迫しているというのです。

 武器商人や防具商人が、各職人の作品を安く買い叩き、冒険者に高く売りつけているというのが、ドウラさんの考えなのです。

 そしてそれを放置しておくドウラさんではありませんでした。


 魔都に来てからのドウラさんは、冒険者ギルドで実績と信用信頼を築くとともに、各職人に直接特別注文を繰り返し、職人の腕と性格を確認されました。

 魔獣薬の指名依頼を受ける事で、魔都の役人とも厚い関係を築かれました。

 武器ギルドと防具ギルドを敵に回しても、冒険者ギルドだけでなく、魔都役人も味方につけられると確信出来てから、職人の引き抜きと囲い込みを断行したのです。


「残念だが、今の冒険者で竜種の鱗を手に入れられる奴は少ないんだ。

 素材を扱うギルドも防具ギルドも売り惜しみをして、価格を釣り上げている。

 とてもじゃないが、中堅どころの冒険者でも買えないんだ」


「ええ?

 俺達のところには時々依頼が来ていましたよ?」


「金周りのいい貴族や騎士あたりが買っているのか、賄賂に渡していたんだろうさ。

 依頼料は割増だったかい」


「いいや、ドウラさんが言っていたように、冒険者の質が落ちて売り上げが悪いからと、手間賃を安くされていたよ!。

 ドウラさんのようにモノがいいからとご祝儀をくれたことは一度もなかったね!」


「そうかい、これからも標準以上の作品を作ってくれたら、ご祝儀ははずむよ。

 だからこいつも頼んだよ。

 それと、子供達の事も頼んだよ」


 ドウラさんは気っ風がいいので金の使い方が奇麗です。

 私のような貧乏育ちにはとても真似できない金払いのよさです。

 無駄金は小銅貨一枚だって使いませんが、漢気を出す時にはお金を惜しみません。

 今回は職人に対する報酬と、戦闘に向かない孤児を引き取り、職人修行をさせています。

 表向きは安く使うためと言いながら、孤児が野垂死にするのを見過ごせなかったのです。


 まあ、職人を丸抱えした方が、中間搾取がないので、武器屋や防具屋から買うより安いので、無駄金を使わないようにしたともいえるのですがね。

 特に今回のような特別注文をする時は、法外な中間費用が全くなくなりますから。

 要所を魔獣の骨で補強した魔骨革鎧の防御力が気になりますし、完成するのがとても楽しみです。

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