BROTHERs 〜正反対な双子の学園無双譚〜

正木修二

正反対な双子

イルメルン魔法学園。

この国に於いてこの学校を知らない人はいない。この国で初めて建てられた魔法学校であり、魔法教育の最高峰と言われる名門校だ。

いわゆる、原点にして頂点というやつである。


そしてこの日、そのイルメルン魔法学園にとある兄弟が入学した。

だだっ広い体育館。整然と並べられた椅子に、期待、緊張、不安、それぞれを抱えて腰かける生徒に混じってここに一人、うつらうつらと船をこぐ者がいた。

キアン・オルブライト。数多くの偉大な魔法使いを輩出した名家オルブライト家の次男にして、これから始まる物語の主人公の一人である。

短い黒髪に、15歳の少年にしては華奢な体。目鼻立ちの美しい、その端整な顔には薄っすらとクマがあり、昨日入学式の前夜なのに読書がどうしてもやめられず結局オールしたことが示されていた。…彼にとって読書は麻薬である。

そんな彼であるが、入試の成績は上位、寧ろ上から二番目である。


では、一位は誰か。壇上に立ち、今この瞬間、全国から集まったエリート達の総代を務めるその人は果たして––。

「迷惑をかけてしまうこともあるとは存じますが、先生並びに来賓の方々、どうか優しく、時に厳しい指導をして頂ければ幸いです。」

艶やかな黒髪に、小さな美しい顔。その顔はまさにキアンそのものではないか。だがその次の瞬間、少年はこう付け加えた。

「新入生代表、リアン・オルブライト。」

リアン・オルブライト。キアンの双子の兄であり、七百年の歴史を誇るイルメルン魔法学園の入試に於いて歴代最高点の満点をとった天才。その才は魔法の分野だけにとどまらず、勉強、運動、音楽からコミュニケーション能力にまで多岐に渡る。また、そんな誰もが認める天才でありながら本人は品行方正、謙虚で優しく、そこが更に人を集める理由であった。


そんな、双子でありながら真逆の性格をした兄弟の、痛快無比な学園物語がこの日、始まろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る