第13話
ドラゴンを背に走り続けた有咲は、無事洞窟を抜けることが出来た。
「ふぅ〜。なんとか出れたー!」
降りてきた谷を登り、もう一度洞窟の方を振り返ると、大きな音をたて洞窟の入口は崩れて入れなくなってしまった。
1度きりのボーナスダンジョンだったようだ。
「あのドラゴンさん、巻き込まちゃったかなぁ。本当なら入る時に倒してるはずだしね」
新たなスキル【座標固定】を手に入れた有咲だったが、それを使える機会はほとんど無さそうだ。
ダンジョンから無事生還した有咲が時計を見ると、時刻は16時を回っていた。
「やばっ!もうこんな時間。…………でもあと1時間だけっ!」
ドラスレに出会う前は、ゲームなどやっているときが1番苦であったはずだが、それも変わってしまった。
「いまランキングどーなってるのかな。負けてたら追いつけなくなっちゃう!」
プロフィールを開くと、討伐数のところに有咲の名前はなかった。
その場合、自分の順位が下に表示される。
そこには、11位と記されていた。
「ちょっと下がってきてるなぁ。でもあと1週間くらいあるし、明日から頑張ればいっかな」
いままで街をあまり探索したことのない有咲は、始まりの街へと向かった。
始まりの街は円形の街で、東西南北にそれぞれ大通りがある。
街の中心は大きなスクリーンや掲示板があり、そのときの1番大きなイベントについてなどが表示されている。
東は武器屋や防具屋など
西は防具とは違ったファッションを楽しむための服屋など
南はスイーツや高級料理店の味が楽しめる飲食店など
そして北は占いなどの娯楽施設がある
有咲は東にしか行ったことがなかったため、他にどんな所に何があるのか、ほとんど知らなかった。
「やっぱり始まりの街って色々あるなぁ。こうやってゆっくり回ってみるのもゲームの楽しみ方のひとつなのかな」
とりあえず街の中心にきたものの、どこへ行こうか決めかねた有咲はまず、南の飲食店街へ向かうことにした。
大通りに立った瞬間、有咲は目を輝かせた。
料理でいえば中華料理やフランス料理、和食など。
スイーツでいえば、クレープやパフェ、餡蜜やアイスなど、食べたい料理が多すぎたのだ。
スタイルを気にする乙女にとって、食べ過ぎはNG。しかしここは仮想世界。いくら食べても本当の肉体にはなんの影響もないと、多くの人で賑わっている。
有咲もまた、その1人だった。
悩みに悩んだ末、有咲は好物の和食に決めた。
有咲の祖母の作る和食が大好きだったからだ。
店に入ると、手元のパネルに料理が表示された。
しかしそこには、メニューのうち明るく表示されているのは数種類。
「あれ?品切れとかかな?って、そゆことか」
試しに暗く表示されたところに触れると、お金が足りません。と表示された。
新武器を買ったばかりの有咲は、お財布が凍える寒さだったのだ。
「うーん。頼めるのは……お!お饅頭あるじゃん!」
老舗の味を楽しんだあと、美味しいご飯を好きなだけ食べるために雑魚狩りへと向かう有咲だった。
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