第8話
「な、なんで舞衣がこんなとこにいるの?」
「顔は有咲だけど……、なんでそんな…。まぁいいや、 そういう趣味もあるよね。あと名前で呼び合うのはやめよ。ここはゲームの中だし、マナー違反だよ」
「そういう趣味?」
「いや、なんでもないよ。プロフィールみせて」
2人はプロフィールを見せあった。
「えーっと…えーぜっと?」
「AZアズだよ、AZ!梓野のアズ!」
指摘しつつ舞衣のプロフィールをみると、そこには『アズ』と記されていた。
常に勝ち続けていた姉に対して、対抗心を抱いてはいたものの憎んではいなかった。寧ろ、憧れてまでいた。
競いの場以外では普通の仲のいい双子姉妹であり、故にゲームのプレイヤーネームまでも似てしまったのだ。
「はは……似ちゃったね。でさ、なんで舞衣がここにいるの?」
舞衣もまた、有咲同様にゲームには縁がほとんど無かった、はずだ。
何故なら舞衣も有咲に負けず努力家であったからだ。
「今回のテスト本調子じゃなくてさ。その帰りに気づいたらこれ買ってたんだよね」
「えっ、私もだよ」
これもまた一緒であった。
その後一通り敵のドラゴンや武器の情報の話をして、有咲は雑魚狩りへ、舞衣は別の場所へと別れて向かった。
舞衣視点
有咲と別れてからしばらく歩き続けると、始まりの街の門が見えてきた。
始まりの街には武器屋や防具屋の他にも、普通の街同様スイーツなどを取り扱う飲食店や理髪店などもある。
舞衣はその中でも、占いにハマっていた。1回500円で占ってもらい、その結果に応じて様々なバフがかかるのだ。
今日あの巨大なドラゴンをたった2発で倒せたのは、ゲーム内最大乱数の攻撃力上昇のバフがかかっていたからだった。
「それにしても、まさかこんなとこで舞衣に会うなんてな〜…。このゲームもプレイヤー結構いるっていうのに。てかあの武器つよそー。どこで買ったんだか」
サービス2日目にして、この「DRAGON・SLAY・ONLINE」、通称ドラスレの総アクティブユーザは8000を超えていた。
舞衣はそのあと街の飲食店の飲食店で小腹を満たし、何処へ行くともなく街をフラフラとしていると、その中心まできていた。
そこには大きなスクリーンがあり、ランキングや今は無いが開催中のイベントについても表示される。
「ランキングかぁ。有咲のプロフィールの討伐数のとこすごい数だったからなぁ。載ってるかな」
上からAZの文字を探す。それはすぐに見つかった。
「あっ!な、7位!?討伐数127!?うっそでしょ…有咲
、どんだけ楽しんでるのこのゲーム……」
驚きのあまり何度か目を擦り確認する舞衣だったが、その名前が変わることは無かった。
ずぶ濡れになった有咲は、《炎の契り》を買った時に勧められて買った、あるアイテムの使い時だと取り出した。
「2000円のフク袋!ホントに服とかがはいってる福袋なんだっけ。いまこそ!その使い時だー!」
袋の中身は開けた瞬間に確定する。当たれば袋何倍もの値段の服がはいっているとかいないとか。
えいっ!と袋のテープを千切ると、わくわくしながら開いた。
袋から取り出したのは、エメラルド色のTシャツに茶色の長ズボン。そして真っ白な靴だった。
「えっと……、男性用、かな?これじゃ着れ……」
昨日の記憶が脳をよぎる。
「ああああああ!そうじゃん!私、男の子だった!」
舞衣が言っていたことの意味がようやく分かった。
そういう趣味とは、男性の姿でありながらドレスをきていることだった。
そのことにようやく気がついた有咲は、とりあえず早く着替えなきゃ!と服を装備した。
「意外と似合って……って、ちがーう!」
荒野の真ん中で、銀髪の好青年が1人で叫んでいる姿がそこにあった。
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