第6話

「【岩落とし】!!」


新たな武器を手に入れた有咲だったが、戦場に着くやいなや何度も倒していた鳥型のドラゴンが挑発するように頭上をぐるぐるとまわるので、つい岩落としを使ってしまった。


その後何度か繰り返した有咲にも、遂に飽きがきた。


「飽きちゃったなぁ。今レベルどーなってるのかな」


ステータスを開くと、パラメータの右側に〈討伐数〉、〈累計BP〉の数値のデータが増えていた。


「これがランキングのやつかな。今の討伐数は……127!!頑張ったなぁ!」


実際、127という数字はサービス開始2日目ではとても高いものだった。

現段階でゲーム内順位は7位であるのだが、やはり情報収集をしない有咲には知る由もない。





「新しい武器試してみよっかなー」


目の前には初めて対峙した岩のドラゴン。みるからに固そうな見た目である。


「【煉獄】!!」


有咲が技名を叫んだ瞬間、ドラゴンの足元から炎が広がっていき一瞬のうちに全身が見えなくなってしまった。


「凄いなぁこれ!技がすごい派手!みてるだけでも楽しいなー」


ゲーム歴ほぼゼロの有咲には感激な景色だ。


「おぉ!倒した時ぞー!」


初戦であれだけ苦労した岩のドラゴン戦は武器のスキルで一瞬で終わった。






ここの狩場は有咲だけのものではない訳で、他のプレイヤーやドラゴンも訪れる。


有咲が少し移動したあたりで、周りの地面が異様に濡れていることに気がついた。

濡れていたのはその周辺だけで、そのまわりは乾燥した大地が続いていた。


「誰かががスキルでも使ったのかなぁ。炎のスキル使いだからあんまり戦いたくないなぁ」


その願いは叶わず、水は地面から水蒸気となりそして液体の塊となった。

暗い青色の水の塊は形を変え、巨大な四足歩行のトリケラトプスの様なフォルムへと変化した。


「うわっ、最悪!水のドラゴンなんてどうすればいいかわかんないよー」


ドラゴンは形が整うと、有咲へ向かって突進してきた。

運動は苦手ではなかったため、ドラゴンの突進ギリギリで身を躱した。


「はっやぁ……。煉獄効くかなぁ。見るからに効かなそうだけど、やってるしかないよね!【煉獄】!!」


足元から炎が広がろうとしたが、ドラゴンに触れた瞬間、シュゥゥと言う音を立てて消えてしまった。


「やっぱ効いてない。こうなったら……」


有咲は武器をインベントリにしまった。


「逃げるしかないっ!」


2度目のドラゴンの突進を躱すと、ドラゴンの進行方向と真逆に走り出した。


絶好の獲物を前にしたドラゴンがおいそれと逃がすはずもなく、龍と獲物の追っかけっこが始まった。

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