幕間・桜桃【三人称視点】
──紅蓮のアゲハ。
それはかの昔、ここら一体で活動していた暴走族レディース総長の源氏名である。彼女の代で拠点をどんどん広げていき、向かうところ敵なし。全国にその名を知らしめていたという。
紅蓮のアゲハは、暴走族のリーダーと懇ろな関係となり妊娠したとかで、ある日突然表舞台から姿を消した。
その後を継いだレディース総長は、紅蓮のアゲハの後輩だ。源氏名はチエリ。桜桃と書いてチエリと読む。
だが、チエリは先代・紅蓮のアゲハの伝説に重圧を感じ、それが周りに気取られて、メンバー達にナメられてしまうことになる。レディース総長の座を賭けて決闘を挑まれ、新総長はボロ負けしてしまったのだ。
彼女はそれが自分の力量だと認め、レディースを脱退し、非行の道から足を洗うことを決意。
その後、彼女が紅蓮のアゲハと同じように結婚し、子どもをもうけた時……同じように自分の源氏名を娘に与えたのである。
時は流れ、成長した娘から自分の名前の由来を聞かれた際に彼女は昔話をひとつ、憧れの紅蓮のアゲハの話をした。
それを聞いた娘の桜桃は伝説に夢を見て憧れた。紅蓮のアゲハの名を受け継いだという少女に思いを馳せ、いつか会ってみたいと夢見るようになったのだ。
きっと伝説の紅蓮のアゲハのように気高く孤高であるはずだと。勝手な理想を会ったことのない【あげは】に抱き、どんどん期待を大きくふくらませるようになった。
なぜ、母親の黒歴史と言われてもおかしくない話でここまで夢を見られるのかといえば……桜桃は悪いことに憧れるお年頃だったのだ。
【あげは】が、紅蓮のアゲハの再来となり、自分はその右腕になる。そしてその名を全国に知らしめるのだ!
その夢のために彼女は特攻服を身をまとった。
彼女は大きな勘違いをしていた。
【紅蓮のアゲハ】と【あげは】は全くの別物であると理解していなかったのだ。
しかし、それを指摘する人間はどこにもいなかった。
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