第78話  模擬戦 大友義鎮(宗麟)VS 一万田

 今回 話の構成上、先に合戦を始めた方が面白い気がしましたので、その電波に従う事にしました。

 ぶっちゃけると、スパイクの話とか特訓パートを最初に出すと面白くない気がするので、そちらの話は次回にします。


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 あれから一ヶ月。

 田おこしという共同作業を交えて連携のとれた一般人と、武士として戦う事を仕事とした人間たち100人同士での模擬戦が始まった。


 農作業で農作業用の筋肉が鍛えられた精悍な顔つきの作業員たち。

 見物に集まった人間たちはその異様な光景に顔をひくつかせていた。

 その中で進み出てきた男が言った。

「……………あの、五郎(宗麟)様」

「おお!一万田!今日は遺恨のないよう正々堂々戦おうぞ!」

 と対戦相手に握手を求める。だが

「…その異様に長い槍と大きな木組みは…何ですかな?」

 そういってこちらの兵が持つ3間(6m)の長槍@縄でしばった瓢箪付と、1間(2m)の棒先に幅4mのトゲ付きの板がついている特殊盾を指さした。


 この時代の豊後の槍と言うと2m位が標準だったから、異様に見えるんだろうなぁ…(※諸説ありますがバリケード盾だけは存在してないと断言できます。


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 ■模擬戦 大友義鎮(宗麟)VS 一万田








 結果;大友義鎮の勝利! 勝因;長レンジでの一方的な槍攻撃



 戦闘のプロとの戦い。それに豊後の総大将である自分が率いる軍は勝利した。

 行殺で。

「勝った!!!第三部 完!(by JOJOの奇妙な冒険)」


「ちょっとまてぇ!!!!」

 所々に打撲を負った一万田が抗議する。なんだうるさいな。

「…その異様に長い槍と大きな木組みは…何なのですか!!!真面目に戦われよ!!!」と半べそ交じりで怒られた。

 えー。俗説の可能性もありますが、尾張の弱兵、越後の強兵という言葉通り尾張の兵は弱いものでした。

 そこで弱い兵でも戦えるように織田信長は様々な工夫をしたといいます。

「信長?(当時は尾張の小領主の息子)」

 その工夫として編み出されたのが、敵から接近されないように遠距離から攻撃できる槍だったそうです。


 なので弓を防ぎ、敵を寄せ付けない『持てるバリケード』の盾と「折れそうで折れないギリギリの強度をもった60本の長槍」で相手から届かないところからチマチマとダメージを与える作戦に出たのだ。

「…いえ、あの倒木がごとき勢いで降りおろされた一撃は『チマチマ』という言葉で済ませてはダメでしょう」

 とベッキーからつっこみが入る。

「特に槍先に紐でつけられた瓢箪は、砂が入っていたら死んでましたぞ」と臼杵からも言われる。

 うん。せっかく長物ふるうならモーニングスターみたいに、ひも付きの鈍器をつければ殺傷力倍増するし、長槍による叩きつけを防いでも後頭部をぶん殴られるから嫌がらせにはぴったりじゃん。

 なお、槍の取っ手には西洋の大型鎌のような垂直に伸びた持ち手があるので、横から回り込んできた敵は後衛が横凪に振って横っ面を吹き飛ばす事も可能だ。

 盾も一個一個が独立したバリケードなので小回りが利く。

 乗り越えようと掴みかかれば引いて肩透かしをくらわしつつ、内側からトゲを押して突き飛ばし、飛び乗ろうとすれば後衛が長槍で叩き落とす。

 盾を持つ四人の息と、優秀な指揮官の指示と、後衛と、優秀な指揮官の指示が合えば、回り込まれても近寄られても怖くないのである。


「そんな卑怯な道具を使ってそれでも武士ですか!そんな奇妙な武器で勝ってうれしいのですか!!!」

 と一万田がわめく。

『うれしい』

 と煽ってやろうかと思ったが謀反ゲージが上がりそうなので、代わりに

「おまえは、仮に戦場で相手がこのような珍妙な武器を使った時にも『卑怯だ!』といって手加減してもらうのか?」

 と言うと黙った。

「……………怒りで言葉を失ったとも言いませんか?」とさねえもんのツッコミが入るが聞こえない。


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 戦いというのは技術の殴りあいだ。

『乏しい技術品で勝敗を競う中世的な戦』など『一般人も男女も関係なく、学生ですら動員するドローンや戦車が飛び交う近代戦争』にかかればあまっちょろいとしか言いようがない。

 どんな手をつかおうが…………最終的に…勝てばよかろうなのだァァァァッ!!なのである。


「…まあ、親方様のお言葉にも一理ある」

 と長老的存在である長増が頭を押さえながら言う。


「吉岡殿!」と恨みがましい目で見る一万田。

「ですが、この武器では筑後の山々や足場の悪い河原で待たれると使えませぬな」

 と次いで長増が告げると

「そ!そうじゃ!このような武器、実際の戦場では役に立ちませぬ!模擬戦であるならば実際に戦える武器でないと!!」と見苦しく言い出す。

 これに、同調する武士たち。


 そこで

「では、同じ武器で戦ってやろう」

 と、情け深く同じ土俵で戦ってやることにした。


 その言葉に顔を輝かせる一万田たち。

 同じ条件なら絶対に負けないとでも言いたげである。

 まあ、あの筋肉ダルマどもと戦っても勝てないけどさ。

 ………………同じ装備でなら。


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 通常の1間槍に木刀、木盾を互いに持つとアウトレンジ攻撃は使えなくなる。

 こうなれば普段から戦う訓練ばかりしている武士たちの筋力がものを言う。

 先ほど一方的にボコられた恨みも含めて殴りつけてやろうとする武士たち。だが、こちらもバカではない。


「では、再戦を始める。者ども………………かかれぃ!!!!」


 という号令の元、戦いが始まる。


「右翼!左翼!展開!」

『進め』の合図である太鼓の音とともに前進する兵士たち。

 これに対し津波のごとく襲いかかる本職武士たち。

 こちらが鶴翼の陣とすれば、相手は魚鱗のごとく広がって攻めてくる。

「まともな打ち合いになればこちらのものよ!!!武士の風上にもおけぬ卑怯者ども!覚悟!!」

 とバーサーカーのごとく襲いかかる武士。

 二つの軍の接近まであと3m…という所で半鐘の音が鳴り、大友義鎮の兵は反転すると



    逃げた。



 文字通りの敵前逃亡である。


 先ほどの鬱憤をはらせると意気揚々だった武士たちは一瞬ぽかんとした後、顔を真っ赤にして


「またんか卑怯者!!!!」


 と追いかけた。


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 スパイクの話とか特訓パートを最初に出すと面白くない気がするので、そちらの話は次回にします。(大事な事なので二回言いました。


 源為朝みたいな規格外品は除外するとして、力が強いと言われる鎌倉武士でも近代兵器の前には無力なんじゃないかなと思います。(色々怒られそうなせりふ

 まあ、こんなアホな装備、弓矢や鉄砲が使えない命の掛ってない模擬戦でないと使えないでしょうけど、初見殺しの武器としては有効なのではないかと思いました。異論は認める。


 次回はゴム底靴と軍手と言う近代兵器(明治以降の普及品)がうなります。

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