大monooki
黒井丸@旧穀潰
黄飯
連載じゃなくて、とある話のたたき台です。メールで送るほどのものでもないのでここにほうりこんでおいたものなので、まともな文章ではありません
●=大工の棟梁 ▲=部下 ■=奥さん ★=老人
黄飯
大分臼杵の名物料理に黄飯(きめし。または、おうはん)ってぇものがありまして、戦国時代の豊後大名、大友宗麟さんが外国のパエリアって料理をまねさせたもんなんですけどね。
くちなしで黄色く色づけしただけのご飯だから味なんてほとんどついてない。その名の通り黄色い飯です。
郷土料理ってのは不思議なもんで、自分たちは普段まずいまずいって文句言っても、余所の県の人間がまずいまずいなんて言おうものなら「何?てめえは人様の家の食いもんにケチを付けるのか」ってムキになったりするもんだから不思議です
さて、そんな黄飯を作らせた宗麟さんですが、1578年に引退して宮崎に引っ越そうとしたら、宮崎を支配していた鹿児島の兵隊さんに負けて大分に帰ってきた。そして、負けが込んで負けが込んで9年かかって、ついには臼杵のお城まで囲まれてしまいました。
城の中には城下町の市民や大工や芸者まで逃げてきたから人でごった返し、さながら避難所みたいな状態になっていたんだそうです。
って、市民なんて言葉ぁこの時代にねぇだろ!もうちっと勉強しろい!脚本家!
えー領民ですね。領地の民。
米を作ったり、年貢を納めたり、落ち武者狩りをしたり一揆打ち壊しまでするか弱い弱者です。
さて、本日はそんな避難民の生活で一席ぶちたいと思います。
●「うわぁー。こりゃまた威勢良く燃えてるねぇ。寺も神社も。お、あっちにあるのは熊八の家じゃねぇか。おう爺さん。爺さんも急いで城に逃げてきた口かい?そっちは寒いからよ、ほらこっちに座りなよ」
(手招きして、床をぽんぽんたたく)
●「しかし、戦って奴はいやだねぇ。
余所様の所に行くときもよだきいけど、こっちに来るのはもっとイヤだね。
自分ちも余所んちもみんな燃えちまう。
え?あっしは日向の合戦で生き残ってね。足悪くしちまったんで大工の棟梁やってんだよ
落ち武者狩りとかやってるやつから、こう、ちょっと偉い役人さんを助けたら、その縁で仕事を回してもらってるてわけでさぁ。
で、こっちに避難してからガキは泣くしカカアは小言ばっかでイライラして、喧嘩して飛び出して来ちまった。
爺さんは、家族は一緒じゃねえのかい?
何、この避難場所に元奥さんがいるから逃げてきた?
ものすごく気性の激しい嫁だったから口げんかになるのが煩わしい?ははぁ…そりゃあ災難だったね。
結婚しててもあんなに恐ろしいんだから、分かれた女房ってのはそりゃ熊よりも恐ろしいんだろうねぇ。
なに、鶏みたいに首をひねりあげてやるって言われた?あんた苦労したんだねぇ…」
(しみじみしていると遠くから叫ぶ声が聞こえる)
▲「親分ー!飯がたりません!」
●「わかったー。飯貰えないか役人さんに聞いて見らぁ!いやね、日向で助けたお役人さんに頼んだら、少しだけ飯を恵んで貰えたんで、もう一度お願いしてくれって言われてね、まあ爺さんの分もくれるように頼んでみるよ
(っびっこをひきながら歩く)
●「へへへ、ちょうど炊きあがった所ってんで、あつあつのをもらってきたよ。何でもここの殿様が自分の米を配ってくれたんだとさ。まあ殿様の米って言っても元々は俺たちの年貢だからな。別にありがたいとも思わねえけど何でも特別な飯を食わせてくれるってぇ話だよ」
(そういうと飯を覆っていた布をはずす)
(みょうちきりんな食い物をみるような目で3度見返して、握り飯を持ち上げてじろじろ見る)
●「なんだこりゃ!飯なのにまっ黄色じゃねえか!」
(まずそうなものを観察して、おそるおそる口に入れてそしゃくする)
●「色は黄色いけど…まあ、食べれなくは…ないかな…っていうか色が違うだけで味はふつうの飯だな。おい熊八、これみんなに配ってやんな。あと、爺さんも、色は変だけどふつうの飯だから食べなよ」
(握り飯を手渡す)
(しばらく米を噛みながら)
●「しかしまぁいるんだよねぇ、こういう余計な事するやつが。
飯なんて白いもんって決まってるのに何でこんなへんちくりんなもんつぎたすのかねぇ。まあせっかくだから食べるけど」
(部下から飯が黄色いとクレームがくる)
●「あ?なんだ?飯が黄色い?贅沢言ってんじゃねぇよ。おれがせっかくわざわざ頭下げて持ってきたっていうのに。え?白い飯が食いてぇ?飯は白いもんだろ?おかずの『かやく』はないのか?ワガママ言うんじゃないよ。黄色いのは滋養がたっぷりはいっているんだから。お殿様のありがたーい、心遣いだよ?それを何だ偉そうに。文句なんていったら罰があたるぞ。ほらさっさとあっち行け」
(しっしっと追い払う)
●「なんでぇ!いつもは親分親分言ってるくせに、ちょっと働きが悪くなりゃ役立たずだの、ろくでなしだの、飯屋の娘に鼻の下伸ばす助兵衛だの。俺はこの国の殿様じゃねえってんだ
…え?殿様はキリシタンだから浮気なんてしない?そうなのかい?寺を追い出された坊さんが「殿様は女好きの乱暴もので、仏様の代わりに悪魔をおがむとんでもないやつだ」って言ってたんだけどね。まあ坊主にとって殿様は商売敵だし、殿様は飯もくれるしそこまで悪い奴じゃないのかもなあ…」
(残った飯を食う)
●「悪い奴と言やぁ、うちのかかぁもひでぇやつでね。亭主が働いて帰ってきたってのに、創作料理とか言ってみょうちきりんな飯を作りやがったんだよ。味噌汁に、よくわからねえ白いすじこのかたまりみてぇなもんこさえやがってね」
●「おい!こりゃなんだ!」と聞けば
■「ほうとうじるですよ」とくる。
●「ほうとう?そりゃなんだ?」
■「アワビの腸をまねした殿様の大好物だからつくってみたんですよ」
●「俺は殿様じゃねえぞ!こんな気持ち悪いもん食えるか」って言ったら、こうさっと椀をとりやがってね
■「せっかく作ったのに、いらないんだったらあたしがもらうよ」
●「おいおい、それ以上太ったら豚と区別がつかねえから止めとけ」っていったら、野郎 亭主をぶん殴りやがった。
それから取っ組み合いの大喧嘩で、終わったらグチが始まってね。
■「あんたは家事も手伝わないし、子守もしない。稼いだ金も酒ですっかりつかっちまう。こんなロクデナシに嫁ぐんじゃ無かった」ってこう言うんで、こっちもカッときて
●「ふざけんな!こちとらつらい思いをして働いてるんでぃ!女子供みたいに炊事洗濯なんてチマチマしたことなんざやってられるか!ガキなんて放っておいても育つんだから、そこらへんの草でも食わしとけ!」と、こういったんだよ。
そしたら、次の日からおいらのお膳にだけ、そこらへんの草だけがぽんとおかれるようになった。
(じーっとお膳を見つめて、草をつまみ上げ)
●「おい、なんだこれ?」
■「草です」
●「草はわかるよ。何で一家の大黒柱のお膳に草しか生えてねえんだよ」
聞き耳をたてて
●「え?何?」
●「「亭主なんて放っておいても死にゃしないんだから、そこらへんの草でも食わしておくことにした?」虐待だよそりゃ!」
って言ったら素知らぬ顔で、ガキと一緒にうまそうに飯を食い始めてね
(目の前の草とうまそうに食う相手の飯を見比べる。一口二口とたべるたびに、口がものほしそうにだんだんと開いていく)
いやぁ、ひどい亭主いじめもあったもんだと思ったよ。
え?それでどうしたって?そりゃもう、一家の大黒柱として毅然とした態度で………三つ指ついて謝りました。
(おどけた土下座をする)
●「だめだね。火起こしから米とぎまで、ちまちました作業はどうもあっしにはむかねぇようで。
やっぱり山の神様には逆らえねぇです。はい。」
●「そういえば、爺さんの元嫁は料理の腕前はどうだったんだい?え?女房家来に作らせていたからわからない…」
(考える)
●「……………もしかして爺さん、いや、おじいさまは御武家さんでございましょうか?だめですよ、そこらの爺さんと同じような格好をなされては、角の留吉爺さんみたいに話してしまうじゃないですか?え?自分はもう隠居したからそこまで、かしこまらなくて良い?へへ、じゃあお言葉に甘えます」
(すごく居心地わるそうにもじもじして、機嫌を損ねないように話しかけようとタイミングを伺って)
●「………………しかし、あれですね。あっしも頭領なんて仕事やってるから分かりますけど、まとめ役ってやつは大変ですねぇ。ウチのお殿様もキリシタンとかいう宗派に入ったり、離婚したり、戦争したかと思ったら負けて帰ってくるし。
それに振り回されても部下には命令に従うように命令しなきゃならないですもん。
部下だって厳しく当たればふてくされて逆らいやがる。かといって甘やかしてほめれ続ければつけあがってこちらをバカにしやがる。嫌われないようにナメられないように、そのさじ加減が難しいもんですねぇ…ご隠居さんはどうですか?え?すごく大変だった?あーやっぱりそうですか。大変ですよねぇ。それでも、神様に恥じないようになるべく我慢していたが、度が過ぎると処刑しましたか、あんまりにも言うことを聞かないから火薬を巻き付けて火をつけたいと思っちゃったりしちゃいましたか」
(うんうんとあいずちうったあとに顔を逸らして「やべぇ、こいつ」という顔芸をする)
●「………いやあ、命のやりとりをする御武家さんだとソレくらい厳しくやっていかないと、謀反とか起こって大変なんでしょうねぇ!俺みたいな庶民はそんな恐ろしい決断とは無縁なんで楽なもんですね」
●「まあ、今になって思えば南蛮の船と取り引きしたり、病院作ったりいろいろしてくだすったり、領民のために良くしてくれたけど、下々の野郎はそのお気持ちをなかなか理解できずに「殿様は変なことを始めた」とか「殿様は前例と違うことばかりしている」とか文句ばっかり言われてましたしねぇ。今回の黄飯だって、大変だけど珍しい飯でも食べて楽しんでくれっていう思いやりから来たのかもしれませんな。まあ高い所に立てばたつほど遠くまで見えるけど、下は見えなくなる。あっしみたいに足が悪いと高い所にはのぼれないですけど、
上の方にいるお方たちは降りることもできねえ。
うちにもガキがいるんですけどね、なんか喜ばそうと思って土産を買うけどちっとも喜んじゃくれねえんですよ。まあ、こりゃどうしようもないことかもしれねえですねぇ」
(しみじみと言う)
●「そういえば御隠居は何て言う名字なんですか?この戦いが終わったら、真っ先に屋敷の修理に伺いやすぜ?」
(耳をすまして、聞く)
●「天徳寺?へぇ、ごたいそうなお名前ですね。まるでお寺みてえだ。そいえばうちの殿様も大友から名前を変えたって…」
(何かに気がついたように口を覆う。驚いた表情のまま「殿ー!」「大殿ー!!」という叫びを二役でする)
(部下)「おお、ここにおられましたか」と立派な鎧を着た武士が目の前で控えると、目の前の爺さんは「うむ」とうなずくと思い出したように★「ああ、今日の黄飯じゃがな」
★「次はもう少し塩を加えるように言っとこうかの」というと、重々しく立ち上がった。
「皆のものあと少しじゃー」「おおー」と言いながら天徳治宗滴こと大友宗麟と家臣、立ち去る。
後には、頭領一人、腰が抜けて一言。
「かやく付きじゃなくて助かった」
……黄飯でございました。(礼)
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