2020年11月、嵐山
005:暁雨、米を炊く (1)
「おとうさん。おなかすいた」
ゆさゆさと揺り起こされて目を開けると、驚くほど近くに
「おとうさん、ねえ、おとうさん」
小声でしつこく呼ぶのを聞いて、じわじわ目が覚めました。
そういえば子守を頼まれて、積み木を積んだりするうちに、退屈してしもて、つい、とろとろ眠ったんでした。
家着の
今さら
何しろ、かれこれ七十年ほどもの間、ずっと死んでおります。
そういうことなのだろうと思うのですが、自分でも定かではありません。
自分がほんまに生きていたことがあるのやら……どうやら。
生前は、
「おとうさん、僕ねえ、お腹が空いたのぉ。そやのに誰もいてへんの。おとうさん、ごはん作れるぅ?」
生まれてこの方、死んでからも含めてええんやったら、かれこれ九十年に
そういうことは
まあ……そういう。古いしきたりがあったんですが。
「アキちゃんお兄ちゃん、お
大人びた口ぶりで言いながら、
ユミちゃんはまだ
そのせいで、家から
散歩がてら誰かがついて行ってやって、外の世界も見せてやったりはするのですが、まだまだ危なっかしゅうて、とてもやないけど外の
うちの子に万が一のことでもあったらあきまへんさかいに……と、
あ。それは皆さんご
「おとうさん、僕とおとうさんで、ごはんを作ろうよ。僕、おにぎり食べたいんや」
いつもよりちょっと成長したユミちゃんが、つんつるてんになった子供用の
こうやと決めたら
そら、まあ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます