醜い変化を遂げる
ヘイ
第1話
私は今の世界が好きじゃない。
顔の見えない誰かが、声も知らない誰かが、文面だけで語り、愚かにもその言葉を疑うでもなく、真実を調べるでもなく、可哀想だからとか、こちらの方が弱者だからとか、そんな自身の正義感を信じて味方をする人がいることをよく理解している。
私には信じられない。
なぜ、見たこともあったこともない人間の言葉を、声も聞いたこともないと言うのに信じられるのか。
人が語ることの多くは、その人の主観により歪み、目の前で語る人ですら疑心暗鬼だと言うのに、何故、それが文字という表記になった瞬間に信じてしまうのか。
言葉は恐ろしい。
私は彼らを恐ろしく純真な人間と思うのです。語る人はその画面の奥で薄ら笑いを浮かべているかもしれない。激憤しているかもしれない。憎悪のままに書き込んでいるかもしれない。
その文字の羅列をディスプレイで見ながら人は義憤に駆られ、将又、見下すように笑い、或いは同情し、何かを徹底的なまでに擁護、非難する。
それは本当に下らない情動。
誰かの捉える世界は、誰かの捉えなかった世界だ。誰かが得た感動は誰かが得られなかった感動だ。
人は他人を思い、そこにどんなプロセスがあったとしても辿り着くものがある。
自分が何を思って行動に移したのか、それはきっと他の人間には理解されないものがある。
だからこそ、否定から始まるのは有り得ないはずなのだ。
私はこの世界は道徳の授業の延長だと思う。誰もが間違いではないはずだ。だというのに、人は他人を否定して、自分が正しいのだと宣う。
多数意見だとしても、そこに辿り着くまでの意思を持つのが動物ではないか。どんな考えを持って、どの答えにたどり着くのか。それら全てを考えれば、人の数ほどそれは存在する。
そして、悲しいことだがこの世界では何かを否定するのに必死な人間もいる。
醜い変化を遂げる ヘイ @Hei767
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます