第14話 セレス出来る子……。

 それから4日経った頃。

「お前……天才過ぎないか……? なんでこんな短期間で影纏い玖ノ型まで出来んだよ……」

 俺は玖ノ型まで使えるようになった。


 まぁ、玖ノ型は10回に1回成功するくらいだが。


「平均的にはこれを1つ使えるようになるのに1週間から1ヶ月はかかるんだぞ。それを4日で9つて……」


 余談だが、それぞれ使う魔法によって言い方が違うらしい。

 火だったら火纏いなんちゃらの型、水だったら水纏いだと。


 魔法によって難しさ、強さが違うから格付けもされてるらしい。

 火とかは中級、影は上から2番目の極級に入るらしい。級は下から

 中級

 上級

 極級

 英雄級

 らしい。


 やっぱこの世界で英雄ってほんと偉大なんだな。

 スキルも伝説より英雄が上だし。


 あと何故かわからんけど火纏いと火炎纏いは型の内容は同じだけど中級と上級とで格が違うみたいに、系統は同じでも格が違うものが数多く存在するらしい。


 紛らわしい。


 俺これを出来るようになったってすごいな。

 これって簡単そうに見えてすごい難しいし、武器に魔力使ってるだけでも身体がついていかないし。


「シンどんな感じー?」

「とりあえず影纏いは玖ノ型まで出るようになったけど、レイは?」


「私は雷纏いと光纏いをどっちも陸ノ型まで!」

「おぉ! すっご」


「もっと褒めて。てか崇め奉れ」

「誰が崇め奉るか」


 でもそれはほんとにすごいな。

 纏いごとにやることは全く違うのに両立して出来るようになるってマジですごい。


 正直に言うと、使えるようになったのは3つしか違わないけど、俺よりも2、3倍はすごい。

 こいつ天才か。


「明日もやるか?」

 プロットが聞いてくる。


「うーん。どーしよ」

 王都全く回ってないから行きたい気持ちもあるけど。


「明日は遊ばない?」

「そうだな」


「明日はいいわ」

「そっか、学園まであと2日だから準備しとけよ。つっても全部王城がやってくれてるだろうからなんもすることないだろうけど」

「まぁな」


 明後日だって俺達がやることは制服着るのと学園バッグもらうのと登校してオリエンテーションみたいなのするだけだ。


 学園バッグは日本で男子高校生がよく持ってるアレと一緒。


「じゃあもうこんな時間だし、そろそろお開きにするか」

 時計を見ると、もう8時だった。


「そうだな。じゃあ、おやすみ」

「あぁ、おやすみ」

「うん、おやすみ。明日遊びに行くんだからちゃんと起きてよー」


 俺はそのまま自分の部屋に向かった。


「ちょっとシン! 分かった!?」

「……」

「シーン!」


「じゃ、おやすみ」

「起きてよ?」

「……」

「ねぇ?」


「……おやすみ!!」

 そのまま勢いよく部屋に入る!

「ちょっと!」


「……もう、おやすみ」

 呆れるような、それでいて優しい微笑みを浮かべるレイだった。


 ―――――――――


 翌日、俺は……


「おーいシーン!」

 やっぱり起きなかった。


 既にレイは俺が寝ているベッドの前に立っている。

「試してみるかな……」

 レイはそう呟くと、右手を俺の前に翳した。


「フォス・アギオ」

 その空間が眩い光に包まれる。


「うぅ……」

 俺は目が覚めた。


 覚めてもなお、レイは光を出し続けた。むしろ出力を高める。


「……眩しい!!」

「起きた?」

「起きたからやめて!」

「はい」

 その途端に光は収まる。


 レイは光魔法で強制的に俺を起こした。


「はい、今日は何の日ですか?」

「レイと遊ぶ日です」

「はい、よく出来ました」


「流石にあの光で起こすのは酷すぎないか?」

「だってシン、普通の光じゃ運良く起きたとしても寝ぼけたままじゃん」

「それはまぁ……」

「ね?」

「だからってあれは酷くないか?」


 俺がこれ程言うほど、レイの出した光はすごいものだった。


「とりあえず今日は王都しっかりと回るんだから。分かった?」

「はーい」


「じゃあ着替えて着替えて」

「もう少しこのベッドで休ませて……」

「だめ」

 即答された。


「ベッドふかふかなのは分かるけどだめだよ」


 俺は無理やり着替えさせられた。

 なんでこの年にもなって身長20センチも下の女子に着替えさせられなきゃいけないんだよ……。普通に恥ずいわ。


 あー……ベッドに戻りたい……。


 そういえば最近ずっとレイと一緒にいるな。

 ふとそんなことを思った。


 ……ん?

 なんか忘れてるような……?

 なんだっけな?


 んー……。

 ま、いっか!思い出せないし。


「ん? あ、セレスだ」

「うん?」

「おーいセレスー」


「?」

 呼ばれたセレスはこっちを見るとこっちに来た。


 あ、そういえば今までセレスのことすっかり忘れてたんだ。


 あ、いや、違うんです。忘れてたわけじゃないんです。ただ他のことに夢中になりすぎてただけで……。


 決してセレスの影が薄いから忘れてたとかいう訳では決っっしてないんです。ごめんなさい。


「どこか行くんですか?」

 俺が心の中でそんなくだらないことをしているとセレスがそう聞いてきた。


「うん、これから王都に遊びに行こうとしてたとこ」

「そうなんですか……ぃぃなぁ……」

 うん?最後いいなぁって言ったか?


「良かったらセレスも一緒に行く?」

「良いんですか!?」

 セレスがグッと迫ってきた。

 近い……。


「あ、あぁすみません……」

 しゅんとしたセレス。

 仕草可愛いなぁ……。


 俺は思わずセレスを撫でた。


 あれ、俺って撫でるの好きなのかな。

 いや、そんなことは無いはずだ。うん、そんな変な趣味持ってるわけではないんだ。


「あぅ……」

 セレスは俯いた。


「ちょっと、セレス一応第3王女なんだよ?」

「あ、ごめん」

 すっかり忘れてた。

「いえ……」


「えっと、じゃあ行くか?」

「あ、はい。そうしましょう」


「セレス、それ着替えなくて大丈夫?」

 レイが心配するように聞く。

 あ、そっか。


 セレスが今着ているのは青を主張したいかにもお姫様が着そうなものだ。


 そんなものを着て護衛も付けずに出歩いたら危険じゃないわけがない。

 誘拐でも何でもしてくれと公言しているようなものだ。


「あ、そうでした。すぐ着替えてきますから、少しだけ待っていていただけますか?」

「もちろんいいよー」

「ありがとうございます!」


 ぺこっとお辞儀をしてからセレスは駆け足で着替えに向かった。


 俺たちはそれを見送る。


「そういえば今日ってどこ向かうの?」

 何も知らなかったことを思い出した俺はレイに聞いた。


「分かんない」

 即答で一言。


 いやおい。

「王都しっかり周りたいって言ってたのに何も考えてなかったのか?」

「だってシンがなんとかしてくれるんでしょ?」

 ……いつの間にそんな約束した?


「何それ、俺聞いてない」

「うん。私も聞いてないよ?」

 ……。


「お前絶対何も考えてなかったのを誤魔化しただけだろ」

「そうだよ?」

「……」


 なんかすごい清々しいな。


 そうこうしてるとセレスが戻ってきた。


「すみません、お待たせしました」

「大丈夫。じゃあ行こっか」

「待って、どこ行くの?」

「あ、そっか」


 何も考えてなかったんだった。


「もしかして、行く場所を決めてないんですか?」

「お恥ずかしながら……」

「えっと、王都をしっかりと周りたいんですか?」

「うん。そーだよ」


「ちなみに既に行った場所は?」

「商店街とウェンズさんの魔道具屋さんくらいかな?」

「なるほど……」


 考え込むセレス。


「あ! じゃあこんな感じのルートはどうですか!?」


 手をパンッと叩き、表情を明るくさせながらセレスが提案してくる。


 セレスが言うにはこうだ。


 まず、パラシェル公園(王都名物の公園)に行く。


 その後近くで昼食を取り、サンクテュパークへ。

 サンクテュパークは遊園地みたいなものみたい。


 4時くらいまで遊んだら、魔法院へ。


 その後に今日月1回の花火がちょうどやるそうだから、それを見るのだそう。


 魔法院ってのは魔法について研究する所で、この国の魔法技術の最先端の物がわんさか集まってるそうだ。

 色々体験出来たり、観覧出来たりするのだと。


「1日で行ける範囲で、王都の名所を凝縮してみました。

 ちなみに帰るのは大体6時前になる計算です。明日は学園ですし、あまり遅すぎない方が良いでしょう?」


 ……今の5秒くらいでこれ考えたの? 時間計算まで?

 何コレ、セレスって出来る子だったの?


「まぁ、ツッコミどころ何もないし私は賛成だよ。シンは?」

「ん? あぁ、俺も賛成」

「じゃあセレス。申し訳ないけど案内してくれる?」

「はい。任せてください」

 セレスはにっこりと笑ってそう答えた。

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