夕顔姫が完成した、けどまた変なのに憑かれた。
夕顔姫が完成した、けどまた変なのに憑かれた。
しかもなんか面倒な事が発覚した上に面倒なことを頼まれてしまった、どうしようか。
とりあえず朝から順を追って書いてく。
朝は普通に起きて朝支度して、早速作業に取り掛かったんだよね。
在庫の方は大丈夫だったから夕顔姫の製作を。
同居人は今日もサボりだったんだけど、精霊マニアさんに呼ばれたらしく火龍と一緒に出かけていったから結構集中して作業ができた。
昼過ぎ頃に完成した、そのタイミングでちょうどよく同居人達が帰ってきた。
やっと完成したよ、これから起動させてみるよって言うと、へぇと大して興味なさそうな顔をしていた。
夕顔姫の霊装の形は夕顔の蔓と花を模した首飾りにした。
エーテル体に展開した時の形は少女の人形、茨姫達はどちらかと言うとキュート系だけど、こっちはやや大人びた感じになるようにした。
性能としては魔的効果のある歌を歌うというもの、事故った時に面倒だから今回は治癒系しか登録してなかったけど、登録しようと思えばデバフでもバフでもなんでも。
仕組み的には少女の人形の形をした音楽プレーヤーなんだよね、ざっくりいってしまうと。
だから今度こそ何もないと思ってたんだ。
起動させて夕顔姫を歌わせた、歌わせたのは簡単な治癒効果のある歌だった。
途中まではうまくいっていた。
歌の半ばくらいで音……というか声になんかやたらと生物みが出てきたというか、なんかすっごい美声になったような気がしたんだけど、気のせいかなって。
様子を見てた同居人は感心したような顔で夕顔姫を見ていた、火龍もぽわーっとした顔で歌を聴いていた。
歌い終わった後に、同居人が随分といい歌だったなって。
そしたら夕顔姫がぺこりとお辞儀してこう言ったの。
お褒めいただきありがとうございます、って。
……もう一度言うけど、夕顔姫はざっくり言ってしまうと人形型の音楽プレーヤーのようなものだ。
登録していない音源以外、発するわけがないのである。
そして、キサラギは当然そんなセリフを夕顔姫に登録していない、ついでに言うと褒められたらそれに返答するようなリアクションを取るなんて機能つけてない。
キサラギ、プチパニックに陥った。
同居人になんでそんな騒いでんだって首傾げられたんだけど、夕顔姫の性能を教えたら神妙な顔で夕顔姫を睨んでいた。
お前はなんだ、ってキサラギが夕顔姫に問いかけると、夕顔姫は少し困ったような顔で頭を下げて、謝罪と感謝の言葉を口にした。
その後夕顔姫……というか夕顔姫に憑いてしまった精霊(の幽霊?)から説明された事を箇条書きで示す。
名前に関しては生前の名前があるらしいけど、一律夕顔姫と茨姫(初号機と二号機)とする。
・夕顔姫は大昔の戦いにより肉体を完全に失い、転生すら行えない状態で世界中を自らの意思とは関係なくさまよっていた精霊の魂だった。
・肉は完全に滅んだものの、なまじ強すぎた魂は崩壊し切ることも再生し切ることもできずに、繰り返し魂が崩壊する痛みに苦しみながら世界中を彷徨うしかなかった(ちなみに再生することができれば転生できて、崩壊しきれば意識のないただの魔力にとなり散ることができるらしい)。
・彷徨っている最中に自分の肉の代わりとなる器(夕顔姫)を見つけたので無我夢中で取り憑いた。
・茨姫の中身達もほぼ同じような経緯で茨姫に取り憑いた。
・夕顔姫と茨姫(初号機)は同じ主人に仕えていた、茨姫(二号機)は別の主人に仕えていた。仕えていた主人同士が敵対関係にあり、彼らが肉体を失った戦いというのは敵対関係にあったその二勢力による戦争だった。
・その時に肉体を失い、魂の状態で世界を彷徨う羽目になった精霊は十二体いて、雷、音、火、水、土、風がそれぞれ二体ずつ。
……ざっくりまとめるとこんな感じになる。
正直言って完全には信用していないけど、とりあえず本当のことだということにして話を進めた。
なんでキサラギが作った姫人形シリーズが彼らの肉の代わりになったのかと聞いてみた。
その条件さえわかれば、もう二度とそういう霊装作らずに済むなって思ったから。
夕顔姫曰く、古くから肉を失った精霊に代わりの肉を作る力を持つ人間が生まれることがあるらしく、キサラギはそれに該当するのではないかと。
そんなご大層な力を持っているつもりないんだけどって言ったら、そういう力を持っているからわたくし達はこの肉体に宿ることができたのです、って。
そう言われてしまうと否定する材料がこちらにはなかったのでとりあえず信じることにした。
あと姫人形シリーズ以外には何も宿らないのは、精霊の器としてはふさわしくない形をしているからだろうって。
それじゃあもう姫人形シリーズは作らない方がいいなって思ってたら、夕顔姫が三つ指ついて、お願いがあります、って。
嫌な予感がしたけど、その内容を聞いてみた。
件の戦いで肉体を失った、残りの九体の精霊達の肉の代わりとなる器を作って欲しいって頼まれた。
本当は夕顔姫の仲間だけと思っていたらしいけど、すでに敵対していた方のうちの一人(茨姫二号機)がいるのであれば、それは不公平なのでって。
……滅茶苦茶苦しくて辛いんだって、意識だけの状態で死ぬこともできずに彷徨い続けるのって。
もうあんな苦痛は耐えられない、自分達の仲間が未だにあの苦痛を味わっていると思うといたたまれないって。
話の途中で起動させた茨姫(初号機と二号機)にも頭を下げられてしまった。
ひとまずは、一度考えさせてほしいと言っておいた。
あと九体も同じようなのを増やさなければならない、と思うと手間暇が尋常ではないからなあ……
でも生き続けてしまう苦痛はキサラギにもなんとなくわかるから、どうにかしたいという気持ちも強い。
その辺りまで話した頃には夕方になっていたので、一旦話を切り上げさせてもらった。
夕ご飯はなんにしようかなって思ってたら、同居人がカレー(ビーフ)を作ってくれたのでそれを食べた、美味しかった。
その後は後片付けを済ませて風呂に入って、多少雑談をして今に至る。
その雑談で実は茨姫(二号機)が本当はオスだったとか、火龍がおそらく夕顔姫の仲間の火の精霊の友人だった龍の生まれ変わりであるとかいうことが発覚した。
火龍の方は前世の記憶をなんとなーく覚えているような覚えていないような状態らしい、基本的には忘れてるけど、成長すれば思い出すかも、だって。
……なんかもう疲れた、日記書いてても疲れた、もう寝る。
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