第46話 忘れたい記憶
それは突然だった。
清涼飲料水のCMに出演した少女のスキャンダルが掲載された週刊誌が発売された。
『あの話題のCM少女!有名俳優の二世と判明!しかも、禁断の恋!本紙独占スクープ!!』
その雑誌には電車の中で口づけを交わす
それは明らかにあの電車の中でのキスを隠し撮りしていたものであった。
『お相手はなんと実の双子の兄!あの話題のCMで白川純一の代役を努めたのも彼だった!』
CMに出演した時点で
「聞いた?
「でも、あの雰囲気ヤバくなかった?」
「そうそう、私もてっきり付き合ってるんだだと思ってたわ!」
「でも、電車の中でキスしてたんでしょう!」
「ビックリね!ラノベみたい!」この手の話題は女子達の大好物なのであろう。
「
「ごめん、俺今は誰とも話したくないんだ」席を立ち上がると教室を後にして屋上へと歩いていく。ここ数日の昼休みはこの行動が標準となってしまった。
渡辺直人の話を聞いて、俺が双子の兄であることは理解したそうだが、その存在はそれ以上でもそれ以下でもなかった。
逆に恥ずかしそうに、俺の事を「お兄さん」と呼んだ彼女の顔を見て激しい失望感に苛まれた。
屋上のフェンスに
「どうすればいいんだ。この気持ちを……」俺は彼女への想いを消去する方法を知らなかった。
「
「ごめん、さっきも言ったけれど……俺」
「違うの!違うの!ごめんなさい!!」彼女はその場にへたりこみ大声で泣き出した。
「一体どうしたんだ?」訳が解らなかったが、彼女が何かを思い詰めている事はわかった。
「私が、私が
「な、なんだって、お前!」友伽里の肩を力強く握る。激しく動揺している事が伝わってくる。でも、彼女が男であったなら間違いなく思いっきり殴り飛ばしていたと思う。
「ごめんなさい……、ごめんなさい……、私どうすればいいの?」もう立つ気力も無い様子である。
俺は大きなため息をついた。
「こんなことを言っては駄目なんだろうが、
「えっ?」俺の意外な言葉に驚いて顔を上げる。
「俺達は双子の兄妹らしい。でもそれを知らないで好きになってしまった。俺はこの気持ちを打ち消す事に苦悩している。でも、彼女はそれを綺麗に忘れてしまえたんだから……」言いながら無性に空しくなってくる。
「……」流石に、
「俺も忘れたいよ」それは今の俺の本当の気持ちだった。
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