第37話 通りすがりの高校生だ
下校の時間。
学校の校門の前が人だかりになっている。
「ねえ、あれ!」「ええ!」「まさか・・・・・・!」女子高生達の黄色い歓声が響き渡る。
校門の前には白いジーンズにお洒落なVネックのサマーセーターを着た男性が誰かを待っている。
男はアイドル事務所アニーズのトップを張る
先日の出来事以来、彼のプライドは
自分が主演であったはずのCMで注目を浴びているのは自分ではなく、俳優の一人娘とはいえ一般の女子高生。
それも自分と絡んでいた時は、笑顔ひとつ見せずに四六時中不機嫌そうな顔をしてNGを連発していた少女。
それが、出来上がった作品を見ると現場で自分には見せなかった笑顔が画面からあふれ出していた。
正直いうと白川も彼女のその笑顔で画面に釘付けになったしまった一人であった。もう、画面の中の
ただ、その笑顔は自分が仮病で降板を申し出た後に代役を務めた一般の高校生に見せた笑顔。
彼女のその笑顔を引き出した高校生に強烈なジェラシーを感じていた。
「ちょっと、あれって・・・・・・、
白川は普通の女子なら秒殺されそうな最高の笑顔で
「
「ちょ、ちょっと待ってよ!
「あっ、私の事ですか?あなたは・・・・・・・、誰でしたっけ?」
「俺だよ!俺!この間のCMを一緒に撮影した・・・・・・・」そこで白川はポーズをつけて名乗ろうとした。
「あっ、
「いや・・・・・・、白川、白川だよ。もしかしてワザと間違えていない?」彼にしてみれば日本中で自分の事を知らない女子高生など存在しないとさえ思っていた。これはかなりのショックであった。
「ああ、そうでしたか。こんにちは、私急いでいますので失礼します」
「ちょっと待ってよ。少し君と話しがしたいんだよ」白川は
「キャー!」周りの女子生徒から歓声が上がる。なにやら失神しそうな生徒までいる。
「ちょっと、離してください!私には話すことはありません!」
「いいから」白川は
「ちょっとやめてください」その声は男性のものであった。白川と
「なんなんだ、お前は関係ないだろう。それとも彼女の・・・・・・・?」白川は
「俺ですか・・・・・・、俺は・・・・・・、なんなんだ?」
「し、知らないわよ!」なぜか、顔を真っ赤に赤くする。その顔を見て白川は何かを感じ取ったようであった。
「俺は、通りすがりの高校生だー!です」どこかの特撮ヒーローのような見栄を切った。
「ば、
「お前!助けてやろうとしているのに馬鹿は無いだろう!馬鹿は!」ムッとした顔で怒鳴る。
「だからお前って言うな!」
「なるほどな・・・・・・、君が僕の代役を務めた高校生だな・・・・・・」白川は
「えーと、俺はそういう趣味はないんだけれど・・・・・・」
「
「そうなんですか。ちなみに俺は負けっぱなしですけどね。
「
「どうも、頑張ってくださ~い」
「ちょっと、頑張ってくださいは無いんじゃないの?」
「あああ、怖かった・・・・・・」
「えっ、怖かったの?」
「あ、当たり前だろう、相手は天下のアニーズの白川純一だぞ!一歩間違えたら、周りの女達にボコボコにされていたかもしれねえんだぞ!」
「・・・・・・そうか、ありがとうね」穂乃果は
「ひなちゃんのお迎えがあるんだろ。急ごう!」
「うん!」穂乃果は可愛く微笑んだ。
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