第6話 登 校

 期末試験の試験休みが終了し、ほぼ一週間ぶりの登校。


 俺達の通う高校へは、俺の家から二十分程度の距離を毎日歩き電車で五つ程の駅を経由して到着する。


 ちなみに、隣の家に住む友伽里も俺と同じ高校に通っている。


 中学生の頃の彼女の成績であれば、この高校よりもかなり上のレベルのお嬢様学校への進学も問題なかったようであるが通学の距離と公立高校のほうが、何かと負担する費用が安いので、家庭の経済状況を加味して俺と同じ高校に進学するとの事であった。


 彼女の家は決して貧しい家庭と言う訳ではなく、どちらかといえば裕福に見えるのだが、人にはそれぞれ事情があるのだろうと俺は思った。


 先日、泣きながら家に帰って行った友伽里であったが、次の朝にはいつもと同じような態度で彼に絡んできた。俺には乙女心はさっぱり理解することは出来ない。


ひかり君、おはよう」


「おっす!」俺は、大きく手刀を振り下ろしながら挨拶をした。


「光君、知ってる?今日、転校生がくるらしいよ」唐突に友伽里ゆかりが話題を振ってくる。


「転校生?一学期ももう終わりそうなこの時期にか?お気の毒なヤツだな」一学期の期末テストが終了し、後は、昼までの短縮授業が数日と終業式で夏休みである。どうせなら、二学期から編入してくれば、夏休みの宿題も免除されるのに、糞真面目な奴だなと感心する。


「先生に聞いたんだけど、転校生の女の子、物凄い美人らしいよ!」


「えっ、転校生って女なのか?」特に、美人という言葉に反応してしまった。


「やっぱり興味あるんだ」友伽里は少し口を尖らせて、ねるように言った。


「あんた、そりゃ俺も正真正銘のおのこだからな!美人には興味あるわな!」いつもの癖で人差し指を鼻の下にこすりつけた。


「特に子持ちの年上美人よね」横目で軽蔑するかのような視線をぶつけてきた。


「また……お前、しつこいぞ!」俺は軽く拳骨げんこつを振り上げる。


「きゃあ、助けて!」友伽里は走って逃げていくが、その顔は明らかに笑っている。


 俺と友伽里ゆかりは、高校二年生で同じクラス。成績優秀な彼女は生徒会の副会長である。

 ついでに言うと、彼女の推薦もあり俺も生徒会の体育委員という役職に任命されている。勉学の苦手な俺が、将来大学に進学する為にも、内申点を稼いでおいたほうが良いという彼女の気配りらしい。


 体育会だけ頑張ればいいと言われたのだが、結構集まる機会が結構あって、正直にいうと俺は騙されたと思っている。


 夏休みにある参加希望者だけで行く筈の二泊三日の臨海学校りんかいがっこうも、生徒会委員は強制参加という事らしい。


「ああ、宿題は友伽里ゆかりに見せてもらうとして、旅行は流石にだるいな。盲腸もうちょうにでもならんかしら・・・・・・」体は至って健康なほうであった。

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