6にゃす「おとどけできません」

 さてあとは、運べないジャンルの確認と悩んでた物資を確認しよう。

 今更だけど、要件を確認しないで進めてる自分がいて、驚きというか行動力が勝ってることに気づいた。これもそれもにゃすが私を魅了したからに違いない。

 それでも、本当は住所より先に物資を確認してから依頼をしたかったけど、あの子たちの流儀に合わせるとしよう。


「あ、荷物を持ってくるから待っててくれる?」

「「「にゃす!」」」


 いい返事が帰ってきた。

 買った物資も一応持ってこよう、三匹に判断してもらわなきゃ。お気に召すといいのだけれども。

 荷物と物資を持って玄関のドアを開けると、すぐに三匹が物資に近寄ってきた。


「これ、しってるにゃ」

「にゃーはたべたことある」

「にゃす?にゃーも!」


 半透明ビニール袋に寄ってきて、白にゃすが頭をつっこんだ。シャシャシャ、と軽く擦れる軽快な音がした。中には、とろりソースが入っているカリカリしたキャットフード、流動系おやつ、お魚じゃなくてお肉がいいと噂で聞いたことがあったので、猫用お肉の缶詰が入っていた。

 もう二匹も頭を寄せ、小さくうにゃうにゃと喋っていた。


「運賃の物資なんだけど、何を渡したらいいかわからなくて、にゃすが猫ちゃんと一緒かもと思って買ってみたんだけど、どうでしょうか?」


 自信がなくなって、語尾が敬語になってしまった。


「にゃにゃ、にゃす、ぶっしはこちらでいいにゃす!できれば、やすくていっぱい、なかまもたべるにゃ」

「カリカリをいっぱいとかがいいのかな?」

「にゃす、うんちんぶん、だけでいいにゃ。でもにゃーは、おいしいのすきにゃす」

「このおやつ、食べる?」

「「「にゃー!」」」」


 封を切って三匹に渡すと夢中でおやつを食べた。両手をうまく使って縦長のアルミ袋から上手に中身を絞りだしていた。お手ての白い部分が愛らしい。


 お食事中聞いたのは、どうやら運賃はあの子たちのご飯やケア用品、ペットシート、募金というスタイルもあるらしい。あの子たち的には一番募金がテンション下がるらしい。にゃすにはお金の価値が伝わらないみたい。


「にゃー、ほかにもおいしいにおいするにゃ」


 と、白にゃすが手元の荷物に近づいてきた。もふもふが手に軽く触れた、すごく毛並みがいいのが分かる。くんくん、と袋を嗅ぐとよだれが口周りを濡らした。


「なにがはいってるにゃす?」

「えっと、調味料だけど」

「こちらはおとどけできないにゃす」



まさかの絶望、OLの交渉力を発揮する時がきたようだ。

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