飴のように透き通る世界

柚希藍璃

第1話 僕の世界

(きれ…ね……ぼ…ら…いっ…だね……。)


【頭痛てぇ…】

恐らく二日酔いであろう頭の鈍痛に悩まされながら、僕は体を起こし洗面台へ向かう。

昨夜は仕事に追われていて、ヤケ酒したことを思い出しながら何とか顔を洗い身支度を

済ませる。

【なんか夢見てたような……】

【まぁ、思い出せないんだけどね〜‪w】

なんて軽い冗談混じりに僕は言う。

冗談は好きだ、いつも嫌なことや

面倒臭いことがある度お得意の冗談で

やり過ごしてきた。

……今回もそうだ、

柄でもない昔のことなんか 思い出して

全てを諦めるんだ。

【……!?やっべぇ仕事遅れる!】

僕は休日でもないのに酒を飲んでいたことを

忘れ、急いで仕事場へと向かった。


【すみません遅れました。】

僕は案の定遅刻し、

説教を食らわされている。

うるせぇハゲ口くせぇんだよ、

そんなことを考えながら乗り過ごし

何とか早く切り上げることに成功した。

【おっす、お前が遅刻とか珍しいな、外ズラだけはいつもいいのに‪w】

このうるさい猿は

僕の先輩の亜土健(あずちたける)

ショートカットの髪型に大きい声、

僕といつも遊んで(いじらせて)くれる人だ

先輩と言っても昔からの付き合いだもんで

僕らは親友と言っても良いくらいだった。

【うるさいですよ先輩、猿山にでも帰ったらいかがですか?】

冗談交じりでそんなことを言ったら

いつもの様に先輩は言い返してきた。

【ひどくね!?俺先輩だよ?】

【心にササルでしょう?】

……【サルだけにね?】

そんな冗談を言い合っていたら

上司に怒られたので僕らは

仕事に集中することにした。


……今朝の夢…昔の記憶だよな、確か

僕と同じくらいの年齢で……

でも僕とは真逆の

素直な性格の子供。

そしてなにより忘れられない……

僕の初恋相手だ

汚いと思っていた世界に

彩りを与えてくれた、

透き通った目はまるで飴玉のように…

この世のものとは思えないほどに

綺麗だった。

【ん〜……】

柄でもない昔の記憶を掘り返して、

僕は一体何がしたいんだろう。

そんなことを考えながら

今日の仕事をこなした

……昔話は嫌いだが、あの子のことは

忘れられない、大切な思い出らしい。



ーーーーーー今の僕には理解出来ないけどねーーーーーー



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