🐦の不思議

よしの

第1話 人が変

「チュンチュンチュン」

私は雀のポン。模様がタヌキに似てるのでそう呼ばれてます。

太陽が昇るとゴハンを探しに近所を飛び回ってます。

でも最近、人が変なんです。

前から変だとは思ってたんですが…。

何がって?だって人間って雨かぜが入らないお家に住んで、ゴハンもお店に行けば食べられる。

水浴びもお家で出来るらしい…しかも温かいんだって。

そんなになんでもかんでも出来るのに、みんな朝になると無表情で急いで何処かへ出かけるの。

でも最近は、みんなお出かけしないで家にいる。

お店もあんまり開いてなくて、みんな顔を半分位覆ってゴハンを急いで持って帰ってる。なんとなく沈んでる雰囲気。

朝、たまにお薬の店で行列が出来てたりもするんだけど、やっぱりなんかギスギスしてる。

だから鳩のマルさんに聞いてみた。


「ねぇねぇマルさん、最近人が変じゃない?」


『人?前から変じゃん。前はボクにゴハンくれたのに最近、全然くれないんだ』


「ん…それは私も思ってた。急に冷たくなったよね」


『ゴハン見つけなきゃいけないから、じゃまたね』


「うん…」

マルさん、更に丸くなってきた気がする…。

まぁ急に冷たくされたら傷つくし、ストレス太りかな。


ちょっと飛んでみよう❗

今日はいい天気で、風も南風で気持ちがいいな🎵

八重桜が綺麗に咲いているお家があったので、枝に止まってひと休みする事にした。


「こんにちは、八重桜さん。ちょっと休憩させて下さい」


『こんにちは、どうぞ』


「綺麗に咲いてますね。花びらが柔らかくて、ほんのりいい香りがする」


『ありがとう。今日はどうしたの?珍しいわね。こんな所まで飛んできて』


「うん、人が最近変だなと思って、気になって見てたんだ」


『昔と今とじゃ、人も建物も環境もほとんど変わってしまったよ。私は100年位ここにいるからね』


「100年?そんな昔からここにいるの…凄い。でも、私が気になってるのは最近の事なんだ。人が出歩かなくなった気がするんだよね」


『あぁ、その事ね。それは最近すごい風邪みたいのが流行っていて、うつるのを気にしてるからだよ』


「風邪?全然平気なんだけど」

軽く首をかしげた。


『雀にうつるかはわからないけど、人間のリーダーみたいな人が外に出るなと言って、みんな従ってるみたいだよ』

テレビっていう四角いのがそう話してたと八重桜さんは教えてくれました。


「えっだったら薬のお店に行けばいいのに」


『どうやらそれに効く薬がまだないみたいなんだよ』


「ふーん…ありがとう」

再び飛び立ち、お気に入りの人間がいる家に行く事にした。


私は羽根が生えたばかりで上手く飛べず必死でゴハンを探してツツいていたら、帽子で捕まえられて何日かゴハンをくれて逃がしてくれた人だった。捕まえられた時はかなりビビりましたけどね…。

少しして、その家の近くの屋根に巣を作って雛鳥が生まれた時、近所の飼い猫が雛鳥をねらって屋根に上がって来た。

ヂヂ ヂヂと威嚇をみんなでしても猫はおかまいなし。その時、その人が気がついてゴムボールを投げて応戦してくれたんだけど、猫は気にもとめず雛鳥が一羽食べられてしまった。そうしたら、その人は物置小屋を登り屋根に上がり、それを見た猫はさすがに逃げ出した。

その猫は近所の飼い猫なんだけど、近所のインコや弱そうな鳥を食べる訳ではなく襲って遊んで殺そうとしてるので、そんな猫を見かける度にゴムボールなんかで応戦して、どうにかしろと飼い主にも注意してた人なんだ。

その人の家もインコを飼っていて襲われ、その時はホウキで応戦。それでも猫が連れ去ろうとしたら、腹のそこから響く低い声でその猫の名前を叫んだ。猫はインコを置いて逃げていったんだ。

流石にまずいと思ったと同時にそのまま連れて行き、その次その人に出くわしたら…と猫も反射的に考えた筈。

屋根から見ていた私もいろんな意味で怖かったからね。

その後、インコには羽根に少し傷があり近くの病院で薬を少し塗ったんだとカゴを軒先にかけている時に、直接そのインコから聞いたんだ。

1週間位全然話さなくて心配したんだけど、毎日話しかけて、唄ってたら少しずつ話してくれたんだ。嬉しかったな。

その時に薬や病院や人の事を少し教えてもらい、ボクは外の事を話したんだけど…。そのインコは他の家のカゴから逃げ出しておなかがすいて畑をかまわずツツいてたらこの人に帽子で捕まえられた…と聞きました。その時はビビったとも…その人、女の子なんだよね。


その人の部屋の出窓の屋根におりた。

やっぱり家にいて寝転がって元気はなさそうにしていた。

コンコンコンと音をたてて屋根を歩いていると気づいたらしく、少し起き上がりにっこりしてくれた。隣の家の窓に写ったんだ。

私は下手くそだけど唄って話しかけた。

風邪?は大丈夫だよ。私達はみんな元気に空を飛んでるよ。晴れた日も大雨の時はビッショビショで強風で飛ばされそうになるけど、晴れるのをしってる。

偉い人が決めたってかわらない。お日さまは東から出て雲は流れて西に沈む。どんなに刈られても草花はひょこり顔を出して花が咲いて虫は飛び回り、地面の中も不思議がいっぱい。人に落ち葉をかたずけられて虫が住みにくくて私たちはゴハンが減って、木も栄養不足だって嘆くけど。

星が輝き月が出て朝日で空が紅くなる。その中で私たちはゴハン食べて寝て唄って恋して水浴びしたり…。どんなに偉い人が決めてもかえられない。

薬が効かない風邪? ポンの方にも薬はないよ。それでも毎日元気に過ごしてるよ。他の鳥に食べられたり 車にぶつかってしまう事もあるけどみんな最後は同じ。

沢山空気吸ってかぜをかんじて、みんなで話してゴハン食べて笑って泣いて怒って仲直りして寝て…。

昔、雑木林でゴハンを食べていたら襲われた鳥がいて怖くて巣の中から出られなくなったんだ。ゴハンをあげに行ってたんだけど、段々食べなくなってきて…。

外に出れば襲われるし病気になるかもしれない。何がおきるかわからないって言うから私は思ったんだ。

外に出れば教われる。病気にはここにいてもなるかもしれない。何がおきるかわからないから楽しいんだよ。だから起きよう。そういってちょっとずつ歩いて飛んで…。今ではちょっぴり黄色い羽根の鳥に片思い中なんだって。

2020年の夏にちょっと遠くの湖に一緒に行けるように計画してるらしい。

あなたは何処にいってどういう風にいきたいですか?

そんな事を唄っていたら、ゴソゴソとその人は起き出して近所の神社へ毎朝お参り。その後、雑木林を散歩して草花を刈ってるおじさんをちょっぴり睨んでました。


私の唄 きいたのかな…不思議。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

🐦の不思議 よしの @akkyk0507

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る