上の空

 電車を降り、通学路を歩いて学校に着き、友人と雑談をし、ホームルームが始まって担任が話しを始め、終わったら少し休み、授業が始まる。いつも通りの日常だ。が、日常では感じない違和感と云うのを感じている。自分でもよく分からない。心に靄でもかかったような感情だ。


――橙、雲。なんの事だ?

そう考え込んでいると、いつの間にか上の空になっていて、授業なんてものは自然と終盤に近づき、時の流れも今日の夢の事すらも忘れてしまっていた。


「……白本、おい、白本」

左から小さく聞こえた。小さな音だが、突然聞こえたのでびっくりした。なんだと思い、横を向こうとすると、周りの人が立って顔をこちらに向けているのが見えた。僕は咄嗟に立ち上がった。「礼、着席」と、聞こえたのでもう一時間目が終わったのだと理解した。

 授業が終わり、休み時間に入る。浅見や他の友人が僕の所へやってきて、「お前、一時間から大丈夫か?」などと訊いてくる。

「いや、ちょっと考え事を――」

とだけ僕が返して、自然に話はただの雑談へと切り替わっていった。

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