レッツ☆オフ会
暇なんだよォッ!
人は好奇心の塊だ。その好奇心は時に文明を発展させ、時に闇の中にも無遠慮に手を伸ばす。そして、それだけでは飽き足らずに闇に自らの想像を押しつける。
そうして人々は幽霊、妖怪……様々な都市伝説を生み出した。
──なのに、なのに……!
1人の女性は握り締めた拳を振るわせながら、夜の街で叫んだ。
「なんで人が来ないのよーっ!」
2020年。令和元年。時代は変わろうとも都市伝説に惹かれて自分を見に来る人間は一定数いたのにっ!
彼女、口さけ女はそう息巻いた。
なぜか近頃は人が全然いない。
これでは暇だ。それどころか私の存在意義さえ奪い取られる。
口さけ女は現状に危機感すら覚えていた。
人々が自らを、そして愛する人を守るために家に籠城していることを知る由もなく。
「それで私たちを呼び出した訳ですか」
ここは居酒屋『人面酒』。口さけ女の憩いの店である。
そして今、向かいの席にいる彼女を呆れ顔で見つめながらちくわ天を食べているのがトイレの花子さんである。見た目とは裏腹に食べ物の趣味はおっさんだ。
「だってぇ、人間がピンチだとは知らなかったしぃ?
それにぃ、結局のところ今暇じゃない?
じゃあ飲まない理由なんてないでしょ」
花子さんは開き直った口さけ女を睨みつけ、ため息をついた。
「いい歳こいた三十路女が」
「はぁ!?何よ、アンタなんて見た目は昭和少女、中身はおっさんじゃない!
ていうか何よ、三十路って!私はざっと50歳だけど見た目は二十歳よ。何!?見た目が老けてるっての!?」
「ぱっと見、婚期逃したおばさん」
「はあぁぁあ!?」
「まあまあ、2人とも落ち着いて」
そんな2人を宥めたのは、花子さんの隣に座っているメリーさんである。
ちなみにメリーさんの目の前には早々に飲み干した空のジョッキが置いてある。酒豪幼女妖怪、メリーさん。
2人はしぶしぶ喧嘩をやめると、枝豆に手を伸ばした。ビールの肴には枝豆。2人の趣味は案外被っている。
……聡明な読者の皆さんは既に感じ取っていることだろう。
私たち人間が自らのため、そして愛する人のため籠城戦を開始しているがために暇になった妖怪のオフ会……。これをカオスと呼ばず何と呼ぶ。
今宵、そのカオスの幕が上がったのだ。
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