きつねのきょん -はるのひのこと-

みなはら

第1話

今年もまた咲いたのでありまする。


わたくしめと、あやはねえさま、わが友ぱいろんとで植えたさくらが、

こんなにも大きくなりもうした。



やしろの神域に住まう、さくらの長がやどる何代めかの樹にござりまする。


今のさくらはまだ若木ゆえに、こころねも幼く、

時おりわたくしめに、むじゃきに話しかけてきておりまする。



ねえさまが旅立ち、友ぱいろんが去り、


かつては、あやはさまや、ぱいろんが母、たまさまとともに、

友ぱいろんと手をつなぎつつ観たさくらも、


いつのまにやら、このやしろにて、さくらの咲くさまを、

わたくしひとりにて、眺めねばならなくなったこともありもうした。



今はまた、あらたなる友にゃんまると手をつなぎつつ、

ふたりしてさくらを眺めるひびをすごしておりまする。


にゃんまるとふたりで過ごすときへといたるまで、まことさまざまなることがありもうしたが、


それももう、いまはむかしのことにてございまする。



それにつきましても、

こうして、友とふたりして眺めるさくらほど、かくべつなものはありませぬな。


ほんに、よいここちにてございまする。



来年も、そのまた来年も、

友とならんで、ゆくはるをすごしたいものでありまする。





『きつねのきょん、―はるのひのこと―』

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きつねのきょん -はるのひのこと- みなはら @minahara

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