無意味な時
志央生
無意味な時
しばらくぶりに会った友人は変わっていなかった。小中高と腐れ縁とも言えるような間柄だったが、高校を卒業してからは疎遠になっていたのだ。 だがしかし、久方ぶりにあちらから連絡があり飯を食いに行くことになり、私は駅で待ち合わせしていた。
そうして、やってきたのは高校の頃と変わらない友人の姿だった。実に二年ぶりだったが、何一つ変わっていない姿に驚かされた。
「久しぶりだな」
最初の言葉は当たり障りのないものから、当時の頃の話し方を思い出しながら、会話を進めていく。
「とりあえず、移動するか」
こうして、私と友人は駅から移動を開始した。
居酒屋に入り、適当に注文してから対面した友人に話を振る。
「いま、なにやってるの」
「なんだと思う」
まさか聞いた質問に対して、質問で返されるとは思わなかった。正直な話、友人が今何をしているか人伝に聞いていて知っているのだ。
だが、会話の入りとしては一番無難なものだと思う。なのに、出鼻をくじかれた気分だ。
「さぁ、わからんな。なにやってるの」
私は友人の口から何をしているのか聞こうと、さらに質問返しをする。
「わからないなら、それでいいよ」
このとき、私の頭に血が上りかけていた。人の話題振りをぶち壊して、平然とした顔で酒を飲んでいる。
その姿を見ると、少々苛立ちも募るというものだ。他の話もことごとく、広がる前に壊され、会話が広がりを見せることはない。
近況報告くらいはしてもいいのではないかと思うのだが、それを語ろうとしない。かといって、向こうから話題を振ってくることもない。
おかげで、何の盛り上がりもないまま料理と酒を胃に流し込んでいく。
とくに会話がないまま、一時間弱の時間が経ち、私は帰りたくなっていた。なぜ、この場に来てしまったのだろうか。後悔だけが、頭の中を埋め尽くす。
「会計するか」
そういい、友人は伝票を見て割り勘の価格を口にする。財布からお金を取り出しながら、これ以上に無駄なお金の使い方をしたことはないと思った。
了
無意味な時 志央生 @n-shion
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