過去形

過去形で

そのひとのことを

話さなくてはならなくなった時に

その存在の大きさを思い知る

失くすということは

そういうことなのだと


大きすぎる欠損は心を麻痺させて

その後、遅れて虚無がやってくる


過去形で

そのひとのことを

話すことに慣れていくごとに

仕舞われていく寂しさを思う

亡くすということは

そういうことなのだと


全てを哀しみ虚無に喰い尽くされないように

だから、そのひとのことを過去形で話す



それでも

忘れることなどないのだ

繰り返し想い出す

忘れはしない


大切なものは

どれだけ深く心に沈ませても


忘れられるはずもない

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