それぞれの命

夫、祖母、母、と見送ってきた

そして、今、父を見送らなければならない

いつも、どうしたって悔いは残った

どれが正解なのか不正解なのかなんて

わかるはずはなかった


それぞれの命や想いは

それぞれに違っていて

それぞれの最良を、と

人間ひとは懸命に手探りでも

探していくしかない


何度繰り返そうと

いつも、その無常に独り哭く

それでも目を背けることはできない


見送る日までの時間を

どんな顔で過ごせばいいのだろう

途方に暮れることさえできずに


それでも


誰もが見送り

そして、見送られる日がくる

だから、それぞれの命を

それぞれの形で

生きるしかないのだろう


風の音で目が覚めた真夜中


この懐かしい山の家で

そんなことを考えている


わたしよ……


泣くのは、まだずっと先だ

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