麦藁帽子

飛ばした帽子は見つからぬ

ほら、もうあんなに遠くまで

小さな造花はながついていた

作り物でも好きだった

白い可憐な花だった

つばの広い麦藁帽子


陽射しの眩しい夏の日に

川にかかった橋の上

きらきらひかる水面に

ふと気を取られ乗り出した

その一瞬に気まぐれな

風にさらわれ飛んでった


夏の恋は続かぬものと

流行歌うたも歌っていたけれど

紛い物まがいものでも好きだった

わたしにとっては本物だった

どんなに高価な帽子より

飛ばした帽子が忘られぬ


つばの広い麦藁帽子

白い造花はなのついている


夏に失くしたその帽子

今でも時々想い出す


あんなに大事にしてたのに

失くす時には呆気あっけなく


空に誘われ飛んでった

大好きだった麦藁帽子




……誰より好きなひとだった

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