第34話 また朝が来る


 ご飯を食べ終わり、俺とユナは部屋に戻る。


「いやー、今日のご飯も美味しかったなぁ」

「そうね」


 そんな会話をしながら、俺は定位置となってきているベッド側の床に腰かけた。

 ユナはベッドの上に座る。


 俺は早速気になっていることをユナに尋ねてみた。


「んで、どうだった? 何か情報はつかめたか?」

「情報はまだつかめていないわ。でも城の構造や警備はすべて把握できた。明日は必ず情報を手に入れられると思う」

「お、本当か!」


 どうやらユナの方も順調に調査をすすめられているようだった。

 二日で情報を手に入れることができれば上出来だろう。



「王城は思ってたより警備が薄かったの。あれなら簡単に侵入できるわ」

「まじで? ……なんか意外だな。あんなに立派な城なのに」

「見た目は本当に立派よ。だけど防衛機能はほとんどなくて、見た目だけに気を使って作ったって感じだった」


 とユナは見たものを思い出すかのようにそう言った。


「ふーん。そうなのか。それならユナなら簡単に侵入してすぐに情報を掴めそうだな」

「うん。黒魔法もあるしいけると思う。それよりハルトの方はどう? 素材は集まった?」

「ああ。この通りだ」


 そう言って俺は今日獲れた素材の入った袋をとんとんと叩いて見せる。


「明日の朝、一緒にこれを換金しに行こう。ユナにも換金したお金を半分渡すよ」

「了解」


 そんな会話をしながら俺は床にタオルを敷いて、寝る準備を整える。

 ユナの方も順調そうで安心した。


 それにしても今日は魔物をたくさん狩ったから疲れた……。

 ぐっすり寝ることができそうだ。


「じゃあ、おやすみー」

「おやすみなさい」


 そう言い、俺とユナは寝床についた。


***


 次の日、朝の賑やかな街を俺とユナは歩いている。


「あった、換金所だ。ちょっと換金してくるからユナは外で少し待っててくれ」

「わかった」


 俺は換金所を見つけて、昨日狩った魔物の素材を換金しに行く。。


「すみません。これを換金したいんですけど」


 そう言い、俺はパンパンになった袋を換金所の男に手渡した。

 

「かしこまりました。少々お待ちください」


 そう言って、男は素材の鑑定を始める。


 昨日狩った魔物は全部で三〇体くらいだったと思う。

 低位な魔物ばかりだったから一体につき五〇〇Gくらいにしかならないだろう。

 五〇〇Gが三〇体ってことは合計一五〇〇〇Gにはなるかな。


「鑑定できました。全部で三〇〇〇Gとの交換になります」


 男は当然のようにそう言った。

 いや、金額が少なすぎるだろ。予想の五分の一の金額じゃねえか。


「あの、金額が少ない気がするのですが」

「すみません。金額が少ないのはこちらも重々承知しております。気に食わないのなら別の換金所に行ってもらっても構いません。しかしこの街のどの換金所に言っても同じ値段になると思いますよ。……皆支払えるお金が無いのです」


 男は心底申し訳なさそうな顔をしてそう言う。

 どうやらぼったくろうとしている様子ではなかった。


 それなら仕方ない。換金所の相場なんて国によって大きく違うしな。

 この男の言葉を信じよう。


 俺は三〇〇〇Gでその素材を売った。


 一食にかかるお金が大体五〇〇Gなので三〇〇〇Gあれば生きることには事足りる。

 俺は換金所に出て、ユナに報酬の半分の一五〇〇Gを渡した。


「ありがとう」


 ユナは特に文句を言うことなくそのお金を受け取った。


「じゃあ私は王城に行くから。またあとで」

「ああ。くれぐれも気をつけてな」

「ハルトもね」


 そう言葉を交わし、俺たちはそれぞれ反対の方向へ歩き出す。


 ミリヤの結婚式まであと三日かぁ。

 しかしまあ、三日もあれば必ずユナが何かこの国の情報を掴んできてくれるだろう。

 そしたらユーリ達が抱えてる事情もわかる。

 事情がわかれば俺たちも具体的な行動を取れる。


 とにかく、ユナが情報を掴んでこないことには始まらない。


 頼んだ。ユナ。


 ユナの健闘を祈りつつ、いつもの森へ向かって街を歩く。


 すると目の前から奇妙な格好をした連中が歩いてきているのに気付いた。


 それは白いタキシードを着た三人組だった。三人ともタキシードなのに腰に剣をさげていた。

 さらに妙なことに、市民たちがその三人組に怯えた様子で道を開けているのだ。


 おかげで白タキシードの三人組は堂々と道の真ん中を歩いている。


 なんだこいつら……。偉そうだな……。

 かく言う俺も、他の市民に従って道の端に寄り、道を開けているのだが。


 お偉いさんなのかな?

 王族か貴族辺りだろうか。


 白タキシードの男達は道の真ん中を通って、そのままどこかへと歩いて行った。


 市民たちはホッと胸をなでおろしたように、各々の生活へと戻っていく。


 ……やたら派手な白のタキシードに気を取られてしまった。


 俺も自分の仕事に戻ることにしよう。

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