水神の嫁還り
小紫-こむらさきー
結人
琴音。琴音。
名前を心の中で呼び続ける。
少しだけ見えている白い肌に触れると温かい。
うっすらと緑がかっているように見えるのは体を包んでる葉のせいだろう。
これは夢じゃない。
彼女に張り付いてる葉と葉の間に手を差し込んで、少しだけ剥がす。
額の上がベリッと剥がれて真っ黒な髪が零れるように落ちてくる。
ハラハラと散った椿の花びらが、髪飾りみたいに見える。
「綺麗だよ、琴音」
そう思わず口に出した。
ベリッと音がして、彼女の肩を覆っていた葉が剥がれ落ちる。
琴音の細い腕は青臭い液にまみれている。少しべたっとしているその両腕は、ゆっくり持ち上がって俺の頬に触れた。
やや明るい胡桃色をした両眼が俺の顔を捉え、止まる。
「…結人」
俺は、まだぼうっとしている琴音の上半身を強く抱きしめた。
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