　三原（みはら）はボールを捕ってセカンドへ。まず俺がアウト。友野（ともの）は素早く二塁送球。

「セーフ！」

「にゃあああん！」

　三毛根（みけね）の俊足が活きた。ダブルプレーにならず、あとワンアウト残ってる。

「三毛根君に替わりまして、形代（かたしろ）君」

　何で形代（かたしろ）さん？　千井田（ちいだ）さんの次に足が速い選手から、部内で一番遅い選手に替える意味あるのか？

「何で形代（かたしろ）さんに替えたんですか？」

「せやせや！　俺の快足で一気にホーム走ろ思うたのに」

　三毛根（みけね）さんは猫目になって怒っている。

「形代（かたしろ）君って、異様な雰囲気あるでしょ。何とかしてくれそうと思って」

「そんにゃ理由で……」

　三原はチラチラと形代（かたしろ）さんを見る。形代（かたしろ）さんが俊足と勘違いしてくれたらラッキーだが。

　三原が左足を上げて投げた。番馬（ばんば）さんは低目のカーブを見送る。

「ボーク、ボーク！」

　どうやら三原が静止せずに、すぐ投げてしまったらしい。これで一打同点の形になった。

「タイム、タイム！」

　埼玉（さいたま）翔出（しょうで）の内野陣がマウンドに集まって、伝令が出た。番馬（ばんば）さんを敬遠して東代（とうだい）勝負か。

　ベンチ前でマクダミッドが「ホームランデース！」と叫びながら素振りし始める。

「ピッチャー三原君に替わりまして、夜野（よるの）君」

　また、あいつがマウンドに帰ってきた。

（続く）

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい