502球目 カラオケ採点は甘くない

※つじつまを合わすために、前の話を少し改稿してます



 目の前に広がるは、まばゆいばかりの星空。夜野よるのが前髪をくしで整えながら笑っている。



「ようこそ、私の世界へ」



 思い出したぞ! こいつの超能力は、相手を自分の空間に連れて行き、野球ゲームをさせるというものだ。



「今度こそホームラン打ってやる!」

「いいえ。今度はこれで勝負よ」



 彼女が手を振ると、屋上が一瞬にしてミラーボール輝くカラオケルームに変わった。



「ルールは簡単。今からカラオケ採点やって、私が君より5点以上高かったらゴロかフライでアウト、10点以上高かったらダブルプレー、5点差以下ならストライク」


「その逆は?」


「5点差以下で高かったらボール、5点以上高かったらヒット、10点以上高かったらホームラン。私が先に5点差以内で3勝したら三振、君が先に5点差以内で3勝したら四球なの」


「面白い。やってやろうじゃねぇか!」



 先攻は俺になり、ゆずの「栄光の架橋」を歌った。サビの高音も外すことなく歌えて、86.758点だった。



「次は私ね。YOASOBIの「夜に駆ける」」



 彼女はハイテンポの難しい曲を歌ってきた。音程バーを外すことなく、ボーカロイドのように歌い上げていく。マズい、このままでは負けてしまう。



 夜野よるのは超能力を2回使った。残り1回、どこかで使うはず。ゲームに強い宅部やかべさんなら勝てる。でも、どうやって伝える? ユニフォームやヘルメットは着けたままだ。そうだ、尻のポケットの中に……。



 あった! ポケットの中にスポドリに名前を書いたサインペンがあるってことは、現実世界から夜野の世界へ、自分とその時身に着けたものを持ち込めるということ。その逆もアリだ。俺は左手の袖にサインペンでメッセージを書く。



「ウフフフフ。私の勝ち」



 97,844点。俺の完敗だ。烏丸からすまさん、ごめん。でも、これで追加点の布石は打った。



(続く)

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