496球目 三振の記憶がない

「チェンジ」



 あれ? 俺の打席はもう終わったのか。とりあえずベンチに戻ろう。



「3球目のファール、惜しかったわねぇ」


「ファールですか?」



 グル監に言われたが、何が何だかわからない。夜野よるのに当てられそうになってからの出来事が、スキップされたようである。



「しまっていこー!」



 津灯つとうの声で我に返る。今は目の前のバッターを抑えるのみだ。



 張川はるかわをセカンドゴロ、春島はるしまをセンターフライ、三原みはらを三振に抑えて、三者凡退のナイスピッチング



「7番ライト火星ひぼし君」


「ねぇ。君はストレートかカーブかパームかシンカー、どの球種が好き?」



 相変わらず、バッターに対して好きな球種を聞いてくる。火星ひぼしは「変化球」と答える。



 火星ひぼし夜野よるのの変化球をひたすらカットして、四球フォアボールで出た。お次は恐怖の8番打者・番馬ばんばさん。



「ねぇ。君はストレートかカーブかパームかシンカー、どの球種が好き?」


「ストレートに決まっとるやろ! 来んかい!」



 今まで通り、彼女はストレートを投げた。



「うおりゃあああああ!」



 赤鬼のバットが彼女のストレートをとらえた。



(続く)

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