488球目 スローボールをバントするんじゃない

 初の甲子園は思いっきりストレートを投げたいが、相手の意表を突くためにスローボールを選んだ。



 100キロぐらいの山なりのスローボールが東代とうだいのミットに、入らない。



 いきなり友野とものがプッシュバントしてきた。



「サード!」



 番馬ばんばさんが捕ってファーストへ送球。間に合うか?



「セーフ!」



 やっぱ足が速い。友野は獣化しなくても、千井田ちいださんクラスの俊足だ。



千本せんもとさん、頼むよー」



 彼はヘルメットを取ると、全身に茶色い獣毛を生やし、鹿獣人に変わった。両脚がはちきれんばかりに太くなって、さっきよりも足が速そうだ……。



 千本せんもとさんは打席でジャンプすると、しろいふわふわの毛が生えてウサギ獣人になった。彼女も俊足の選手だ。



「バッター勝負! ランナー気にしたらあかんよ」



 津灯つとうの言う通り、目の前の彼女をアウトにすることだけ考えよう。



 初球は外角低めアウトローのストレート。



「ストライク!」



 東代とうだいは2塁へ投げる素振りだけ。友野は鮮やかに盗塁を決めた。



 2球目はインコースのスライダー。



「ストライクツー!」



 東代とうだいが3塁へ投げるも、番馬ばんばさんがタッチする前に、鹿の脚がベースにふれる。3盗も許してしまった……。



 初回から無死3塁のピンチを背負ってしまう……。



(続く)


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