485球目 夜野の球は打てそうで打てない

 休憩後、食堂にて、埼玉さいたま翔出しょうで対策ミーティングが開かれた。プロジェクターを使って、夜野よるののピッチングを見ている。



「左のスリークォーターで130投げれんて、かなり遅くないかい。しかも、コントロールようなさそうやし」


「センバツではワンゲーム1試合アベレージ平均5.6、予選ではアベレージ6.8、フォアボールを出しています。ヒット数もプラスしたら、エブリィイニング毎回、ランナーを出しています」



 こっそり、自分の1試合平均の四死球を計算してみる。おっ、平均3.9個か。意外と俺はコントロールいいのか? まぁ、よく打たれてるけど……。



「ピンチの場面の強そうやね。いつも打たせて取るピッチングやけど、ピンチの場面で三振取っとるし」


「ミス・ツトーの言う通りです。スタンプ・レイシオ奪三振率が倍増し、シンカーやカーブでアウトにしています」



 相手選手が、低く沈むシンカーに空振りする映像が流れる。打ちやすそうに見えて打てないのが、一番イヤだな。



「真っすぐ打ったらええねん、真っすぐぅ!」

番馬ばんばさんの言う通り、追い込まれるまではストレート狙いで良さそうね」

「さっすがー、番馬ばんばさん」

「あったまいー!」



 番馬ばんばさんは赤面して肩を狭める。ちょっと可愛く見えた。



「OK。ソーそれでは、レフトハンドの120キロ台のストレートを打つトレーニングをしましょう」



 思ってたよりもあっさりと、夜野よるの対策は決まった。龍水りゅうすいさんや黄崎きざきのような150キロPじゃないので、野球経験浅い人でも打てそう。だが、一番の問題は――。



 俺が埼玉翔出しょうで打線を抑えられるかだ!



(続く)

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