479球目 甲子園球場は狭くない

 抽選日の翌日、俺達は1時間、甲子園球場で練習した。ちなみに、甲子園ノックの後、甲子園球場の真ん前のホテルにチェックインする予定だ。



「うっわー! 外野ひっろーい!」



 千井田ちいださんがチーター化けして、甲子園の緑の芝生を駆け出す。



「クア―! クアー!」



 烏丸からすまさんはスコアボードの時計の上に立って、口ばしを最大限に広げて叫んだ。



「意外と広いなぁ。ホームラン打てるかいな」


番馬ばんばさんやったら、ホームランですって!」


「そうそう! あのスコアボード破壊するわ」



 狐狸こりコンビは番馬ばんばさんにゴマをすっている。



「ベイベー、ベイベー、俺はバントマーン!」



 真池まいけさんはギターをかき鳴らして歌っている。野球以外の用具持ってくんなよ……。ほら、高野連のおじさんに没収されてら。



「憧れのマウンドや、オリャー!」



 夕川ゆうかわさんは取塚とりつかさんの体を借りて、バックネットに向かって豪速球を投げる。



「みんな浮かれすぎだろ。1回戦で終わるかもしれんのに」


「まぁまぁ。萎縮いしゅくするよりもええと思うよ」



 センバツ王者と当たるくじを引いたキャプテンが何を言うか。



「ドントウォーリー、ミスター・ミズミヤ。サイタマショーデ対策は出来ています」


「おっ、どんな対策?」


「それはホテルでお見せしましょう」



 東代とうだいはモノクルを光らせて、自信たっぷりに答えた。



(続く)

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