474球目 12人では心もとない

 柳生やぎゅう理事長夫人が追放され、野球部の勧誘活動が解禁された。甲子園出場を決めたとあって、多くの入部希望者がグラウンドに集まった。



番馬ばんばさんと一緒に出るでぇ!」


山科やましなさんと甲子園に行くのはあたしよ!」


「いいえ! 私ですこと」


東代とうだい様とともに甲子園、あー、行きたい」



 知っている奴もチラホラいるな。いきなり戦力にならんだろうが、いないよりはマシだ。魔物がいる灼熱しゃくねつの大甲子園、何が起きるわからないから、人数は多い方がいい。



「はい、注目ぅ! あたしが野球部のキャプテン・津灯つとう麻里まりです! では、皆さん、今から10球ずつノックを受けてもらいまーす。その内容で、採用か不採用か決めますね」


「えー、バッティングちゃうのー」

「足で勝負やと思ってたぁー」


「そう? じゃあ、バッティングしたい人はピッチャー・番馬ばんばさん、50メートル走なら千井田ちいださんと勝負ね」



 ベンチ前で番馬ばんばさんがマネキン目がけてボールを投げる。マネキンはあちこちがくぼみ、首が曲がっていた。



 千井田ちいださんはチーター姿で、グラウンドに侵入した弟を追いかけ回している。その速度は新幹線より速い。



 皆は首を横に振り、「ノックでお願いします!」と、朗らかに言った。



(続く)

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