454球目 ラストイニングかどうかわからない

 あと1球で甲子園出場だったのに、黄崎きざきの同点ホームラン……。上手くいかないんもんだな……。



 次の鈴村すずむらをセンターフライに抑えたものの、俺達の疲労はピークに達していた。



「延長って何回までやったっけ?」


「15回やな。13回からタイブレークで無視一・二塁からスタート」


「みんな、ごめん! ホームラン打たれてもて」


「ドントアポロジー謝罪。私のリードがモノトーン単調になってましたから」



 津灯つとう以外はベンチにぐでーっと座って、全く覇気はきがない。かつを入れないとヤバそう。



「みんな! この試合勝ったら、西北にしきたのスイパラ行きましょう!」



 グル監の提案で、再び皆のハートに火がともる。



 取塚とりつかさんはバットを短く持って、黄崎きざきの速球を打とうとするが、あえなく三振。



 火星ひぼし四球フォアボールで出ると、烏丸からすまさんが送りバント。打球はキャッチャーファールフライでアウト。しかし、東代とうだいの脇腹に死球デッドボールで、チャンス拡大。



 山科やあしなさんは初球から打ち、あわやホームランのファールだ。



「キャアア、山科やましなさん打ってぇ!」


「打つとも、打つとも、みんなのために!」



 山科やましなさんはサングラスを取って、ダイヤモンドの輝きの目を見せる。あっ。女子の何人かが失神したぞ。えらいこっちゃ。



 黄崎きざきのボールは2球目、MAX154キロを計測。これには山科やましなさんのバットが動かない。3球目は――。



「サンシャイン・アロー!」



 山科やましなさんのバットが空を切る。三球三振、この回は無得点だ……。



(続く)

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