450球目 消える魔球が打てない

「ピッチャー福口ふくぐち君に替わりまして、黄崎きざき君」



 ついに5人目のピッチャーが出てきた。初戦に3回6四死球4失点の大炎上して以来、全く投げていない。どんなピッチングをするのか。



「うっしゃあ! 優勝投手なるやでぇ!」



 黄崎きざきは右足を高々と上げて、左腕が吹っ飛びそうなほど振り下ろす。うなりを上げるストレートは148キロを計測した。



「まだまだぁ!」


 149キロ


「もういっちょ!」


 150キロ


「ズバァン!」


 153キロ



 球場内がどよめく。恐らく今年の兵庫県内最速じゃないか。



 ただ、8球中7球がボールという荒れっぷり。山科やましなさんはベースから離れて立つ。



「プレイ!」


「へへへ。高校生活の集大成見せたるでぇ」


 

 黄崎きざきは笑みを浮かべて豪速球を投げる。



「ストライクッ!」


「えっ? あれぇ?」



 一瞬にして、ど真ん中にボールが入ってきた。



「あと2球」


 その後、ボール、ストライク、ボール、ボールでフルカウントになる。球種はストレートのみだから、タイミングが合えば打てそうだが――。



「決める!」



 黄崎きざきが6球目に投げたボールが、太陽のようにまぶしく光る。山科やましなさんは目がくらんだのか、微動だにしなかった。



「ストラックアウトォ!」


「これが、俺の超魔球サンシャイン・アローやぁ!」



 ボールが光るなんて、そんなんアリかよぉ!!



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る