429球目 チーターは持久力がない

「選手の交替をお知らせます。ピッチャー水宮みずみや君に替わりまして千井田ちいだ君」


「なにぃ!?」



 水宮みずみや続投を予想していた村下むらした監督にとって、寝耳に水の交替だ。しかも公式戦初登板である。



 投球練習は軽くキャッチボール程度で済ましたので、実力が全くわからない。村下監督は北部きたべに2ストライクまで待つよう伝える。



「みゃあ! 3人で終わらせたるやん」



 千井田ちいだがチーター化して大きく振りかぶる。ボールを投げたと同時にホームへ向かって走る。



「ストライク!」

「うわっ!」



 120キロ程度のストレートだが、バッターに襲いかからんとするチーターが間近に来るのは恐怖感がある。千井田ちいだは息を切らしながらも投球と同時にダッシュを繰り返す。北部きたべは金縛りに遭ったように固まり、三振に倒れたのだ。



利根橋とねばし! 北部きたべに替わってショートだ!」


「はっ、はい」


「申し訳ありませんでした!」



 村下監督は謝罪する北部きたべに目もくれない。無策の三振は彼の一番嫌いな結果だ。



 俊足の鈴村すずむら果敢かかんにセーフティーバントを実行する。しかし、チーターガールは瞬時に方向転換してボールを捕り、ファーストへ送球する。



「アウト!」



 中田は千井田ちいだの体に当たらないよう、アッパースイングでボールをすくい上げた。打球はライト方向へ飛んでいく。



「捕球成功!」



 火星ひぼしが全身を伸ばしてホームランボールをもぎ捕った。これで三者凡退。浜甲はまこう学園に流れが来た。



(続く)

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